大原ヒラメ三昧
株式会社きんでん
 稲垣 常彦
 千葉県外房の大原港は昔からヒラメや真鯛釣りで有名なところでヒラメは10月~4月を遊漁船の漁期とし資源保護を計っています。
 20年以上前に初めてヒラメ釣りに連れていってもらった時に40~50㎝のヒラメを3枚釣りました。それ以来今日迄50回はヒラメ釣りに行き,釣れる釣れない含めて1.5枚/回平均ですので高級魚にしては確率がかなり高い釣り物です。しかしヒラメは簡単に釣れると思ってはいけません。釣り仲間と切磋琢磨を繰り返した結果です。
 ただ貧乏人ですので道具に凝れません。釣り漫画でも見たのか高価な釣り道具と格好いい服装で全然釣れない若い客の団体を時たま見ます。金をかければ釣れるものではありません。
そうです能書きでなく『腕』が要るのです。

 私は昔買った安い竿をいくつかヒラメに合わせて改造して釣っています。専用のヒラメ竿は数万円もして高すぎとても手が出ません。
 そうは言ってもヒラメは案外気まぐれで真鯛みたいに上級者が一番釣れるわけでもなく初心者のエサに食いつき初心者が一番釣れることがあります,不思議ですね。
 10月解禁のヒラメ釣りに大原の義丸(よしまる)へ行きました。朝4時半の集合時刻には神奈川県からも多数釣り客が来ており素泊まりの宿泊者も含めて船宿は一杯です。
皆さん自分が竿頭(船中で一番釣れた人)になる夢を見ながら釣り談義に花を咲かしています。
 仕掛けを購入し船代を支払い船宿から港の船へ移動すると港は煌々と灯りを付けた釣り船が一杯で船に乗り込んだ釣り客がさかんに用意しています。私の乗る義丸は船長一家が総出で港へ来て準備中で釣り客は自分が取った場所番号札を見ながらクーラーボックスを置いています。
 私はオオドモにクーラーボックスを置き竿掛けをセットし準備完了です。大原漁協協定時刻の5時に釣り船が順次港を出港して行きます。義丸も出港で港では船長一家がお客の大漁を願って「頑張ってー」と言いながら手を振っています。波もなく順調に船ごとに魚場を目指して港から散って行きます。30分位走ると船のエンジンがスローダウンし船室にいた釣り客が各自の釣り席へ移動します,海は凪で廻りはもう明るくなっており良い釣り日和で海岸の崖やホテルが良く見えます。中乗りが元気の良い餌にするマイワシをバケツに数匹ずつすくって客に渡します。
船は釣り場所を決めるためゆっくり旋回しています。仕掛けにマイワシを丁寧に鼻掛けし船長の釣り開始の合図を待ちます。 船長のさあどうぞのマイクの声を合図に皆一斉に海に80号のオモリと仕掛けを降ろして行きます。イワシは魚編に弱と書くように弱りやすいので仕掛けをゆっくり20mの海底に降ろします。イワシが元気な程ヒラメが釣れます。
 イワシは元気で盛んに竿先を引き込みます,ヒラメの当たりとそっくりな引き込みもよくあります。最後の大きな引き込みでヒラメが食ったと喜んで竿を上げリールを巻き上げると無傷のエサのイワシが元気に泳いでいる事も良くあります。 そのうち船中一番で私の竿に当たりが来ると同時にグングン引っ張ります。これはエサのイワシの引きではないなとリールを巻き始めると船長がタモを抱えて素っ飛んで来ます。船中の羨ましそうな視線が痛い程集まるのを肌で感じながらリールを巻きますがヒラメの引きではありません上がってきたのはブリの幼魚青物のイナダでがっかりです。 そのうち私の二人隣の竿が大きく曲がり上がってきたのは50㎝の立派なヒラメです。しばらくするとまたその人がヒラメを釣り上げます,隣の我々は焦るばかりです。
 神様が可哀想だと思ったのでしょう私の竿にヒラメの当たりをくれました,ヒラメ40と言われるように当たりで合わせると必ずすっぽ抜けます,ゆっくり間合いを計って大きな引き込みを待ち合わせてリールを巻きましたが軽い引きです,上がってきたのは30㎝のヒラメでソゲと呼ばれるものでした。
 それから潮が速くなり20mの海底に仕掛けが流され落ち着きません,幹糸がドンドン出て行きます。船長からオモリ100号に変更と指示が出て全員交換です。オモリは重いし潮は速いしで釣るどころでなく根掛かりの連続で仕掛けやオモリを数個失いやや戦意喪失気味です。
 オモリと仕掛けを交換し再度降ろすと潮流で斜めに幹糸が強く引かれます,底に落ちると同時にまた根掛かりです,参ったなと思って幹糸を手で引っ張るべくリールを巻くと船長がタモを持って飛んできてヒラメだと言います。私が「根掛かりだ」と答えると「根掛かりでリールは巻けねーべ」と船長が言います。そりゃそうだとリールを巻くと確かに少しずつ上がってきます。
全然暴れなくただ重いだけです。ゴミかいなと思っていたら船長の言う通りヒラメで1.4㎏でした重いオモリと潮流で重かっただけです。おとなしくしていたヒラメが船長のタモに入ったとたん大暴れで船の中で跳ね回っています。ヒラメの力は強いので相手にせずしばらく放置です。
 そのうち二人隣の竿が曲がり大きなヒラメが3枚目です,私と二人隣の間の客は当たりがなく両側で釣られて焦って不運をひがんでブツブツ言っているので私がそのうち釣れますからと慰めました。
 私の2枚のヒラメを血抜きしていると置き竿が激しく上下しています当たりです,すぐ竿を外すと完全に釣れていてどんどん幹糸を引っ張ります,リールをゆっくり巻くと激しく抵抗して糸を引き出します,周囲の客もこりゃヒラメでなく青物だんべと言っています。 ゆっくり巻いてゆくとうねりが持ち上がった中にヒラメがいます,廻りがヒラメだと叫んでおり,船長がタモを構えて船に近づけたヒラメをサッと掬ってドサッと投げ入れます,ヒラメはドッタンバッタン暴れています,後検1.8㎏52㎝でした。これで私と二人隣がヒラメ3枚で気の毒に間の客はついに坊主でした。
 船長の「ハイどうもご苦労さんでした」の声で11時に沖上がりです。 この日は15名の乗客で7名坊主でした,高級魚なので仕方ありません,坊主も明日の我が身なので海の神に感謝しました。
 結局ヒラメ3枚(52㎝1.8㎏50㎝1.4㎏30㎝0.5㎏)とイナダで家に帰ってから大型は翌日以降に捌いて薄作りの刺身にして大変美味しく戴きました。余りは-50℃の冷凍庫で保存したので半年後でも鮮度良く戴けます。 高級魚は活き作りにしません,大型は翌日以降に捌いた方が美味しさの元であるアミノ酸が増え更に美味しくなるためです。
 ヒラメの刺身はフグみたいになるべく薄作りが美味しく,安い包丁はいくら研いでも魚の身がベタついて薄く切れません。そのため刺身包丁を日本橋の木屋で1万円で買いました,手入れは大変ですが安い包丁と比べると雲泥の差で高級魚の味が引き立ちます。 なお一昨年は義丸で大型ヒラメ3枚合計9㎏も釣りました。 船宿は義丸(よしまる)で20年以上前から通っている親切な船宿です。  
(TEL 0470-62-3440  〒298-0004 千葉県いすみ市大原町大原10575-4)