「見学会に参加しよう!」
                           株式会社きんでん
                                     情報通信本部 奥住 俊明

 私は2007年から昨年4月に退任するまでの約10年間、計装士会の幹事を担当してきました。
 計装士会の歴史は1997年からなので、私はおよそその半分の期間お世話になったことになります。本会報の第42号2018年3月の特集に、歴代幹事来歴が掲載されていて、先輩方の名前や、一緒に活動していた幹事の方々の名前を拝見し、当時を懐かしく思い出した次第です。
 計装士会の活動は、大きく2つあります。本報「計装コミュニケーション」を編集・発行したり、ホームページを管理・運営したりする広報活動と、研修会・勉強会や見学会を企画・運営する企画・研修活動です。
私は一貫して企画・研修活動に従事してきました。昔話となりますが、見学会の企画・運営活動についてご紹介したいと思います。

  みなさんご存知の通り、日本計装工業会は計装工事業を営む法人と個人の集まりで、国土交通省の許可団体である一般社団法人ですが、計装士会は計装士の資格を持つ個人の任意の集まりです。(社団法人でも財団法人でもNPOでもありません、将来この議論も必要かもしれませんね)加入したい人だけが入会して作った任意の団体なんです。
 計装士会のその目的は、「計装士の交流の場として知識の交換と友好を深め、もって計装技術の発展と社会的地位の向上に寄与すること」とあります。
                     
                             JAXA 筑波宇宙センター

 昨年度の計装士会会員数は、全国で2,396名です。計装士の数は、日本計装工業会発表では1級と2級を合わせた総合格者数の累計が32,000人を超えているそうです。そのうち1級と2級両方合格された方やすでに資格失効された方もおられるので、計装士会への入会率は1割程度ということになるでしょうか。ちょっと低い入会率です。計装士会にとって、会員を増やす、入会率を上げることがとても大きな命題で、そのために会報の充実や研修会・見学会を充実させていくことが求められています。
年会費は3,000円ですが、会員の方々に会費を払っても値打ちがあった、満足できたと言ってもらえるように、企画・研修を担っていた私たちも知恵を絞ってきたわけです。

  計装士会の会員には、石油化学や発電のプラントが専門の工場計装技術者と、建物や箱もの工場の中央監視や空調自動制御が専門のビル計装技術者がいます。どちらの会員にも意味のある、興味がわく見学先が求められますので見学先の選定は重要な仕事になります。

  実際の見学会の企画・運営は、以下のような手順で行っていました。
  ①見学先のリストアップ、絞り込み、決定
  ②見学先・関係者との交渉、調整、条件確認
  ③案内文作成、見学者の募集
  ④段取り、役割分担決定、関係者への周知
  ⑤見学報告書の作成(見学終了後、会報掲載用)
  これを企画・研修委員会で議論し、決定し、実施していきます。
  私が企画・運営に携わった見学会のうち、代表的なものを紹介します。

・住友化学(株)千葉工場

 日本の計装業界と計装技術は、国内の石油精製・石油化学産業の発展とともに拡大、進化してきました。今回は計装のルーツを知る見学会です。ここでは石油化学製品の原材料になるエチレンの製造プラントを見学、その分解炉の運転開始は1967年で、見学者の中に当時建設に携わった方がおられ、現場案内役の方と苦労話に花が咲いていました。
 最新の監視制御システムが、整然と並ぶコントロールルームも見学しました。
 現在では情報漏洩やテロ対策などもあり、なかなか見学は難しくなっていると思います。

・関西電力(株)大飯原子力発電所、原子力研修センター

  東日本大震災の5か月前に開催。発電所内はバス車窓からの見学でしたが、研修センターでは実物とまったく同じ原子炉の模型があり、担当者の方にかなり詳しく説明いただき、非常に勉強になりました。社員の方も実際にそれを使って研修をされているそうです。
 震災前の原発は、日本の電力エネルギーのベースロードをしっかりと支え、地球温暖化対策にも大きく貢献していました。福島第一原発の事故で、原子力事業への信頼も大きく揺らぎましたが、今後どうしていくのか国民の議論が進んでいく中で、この見学会は大変有意義なものになったと思っています。









         模擬制御盤                      原子炉内模型

・住友金属工業(株)鹿島製鉄所

 現新日鐵住金(株)、2基の溶鉱炉を持つ製鉄所。この工場では自動車・家電向けの薄板鋼板を製造しており、その全長800mにもおよぶ圧延ラインを見学。赤く焼けた分厚い鉄の板が多くのローラーを通過するごとに薄く延ばされ、最後ドラム状に巻き取られていく工程はものすごいスケールで圧巻。(ターミネーターが出て来そう)鉄は産業の米、鉄は国家なりと言われ、鉄鋼業は基幹産業として、日本の高度成長期を長らく支えてきました。日の丸製鉄、頑張れ、負けるな!ですね。最も評価の高かった見学先の一つでした。

・日本環境安全事業(株)(JESCO) 大阪事業所、東京事業所

 現在は中間貯蔵・環境安全事業(株)。当時PCBは大きな環境汚染問題であり、処理施設の建設が急がれていました。PCBは1960年代に有害物質であることが分かりました。無害化技術が確立するまで長らく時間がかかりました。完成したPCB廃棄物処理施設は、国民に適切な処理を啓蒙する役割も担っていたため、積極的に見学を受け入れていました。我々、電気・計装技術者にとって、PCB無害化処理のことを深く知ることができて非常に有意義でした。

・国土交通省首都圏外郭放水路

 埼玉県春日部市の中川・綾瀬川流域の浸水被害の総合治水対策施設。
 地下に巨大な貯水空間と放水路を作り、水害を防ぐ。その地下空間の大きさは巨大神殿のよう、排水ポンプ駆動用の動力は14,000馬力の航空機用エンジン。




                              首都圏外郭放水路
・ANA機体メンテナンスセンター

 飛行機の整備場の見学で、この見学会もやはり人気がありました。同時に5機を整備できる格納庫に、約900人の整備士の方が働いており、そのスケールは圧巻でした。一番感心したのは安全に対する考え方で、工具の管理の仕方一つとっても徹底しており、非常に参考になりました
 
ANA整備工場

 計装士会は全国を①東北・北海道、②関東・甲信越、③中部・北陸、④近畿、⑤中国、⑥四国、⑦九州・沖縄、の7つの地区に分かれて活動しています。
 それぞれの地区で見学会と研修会または勉強会を、それぞれ年1回ずつ行っています。
 いままでに、火力発電所、地熱発電所、自動車組立工場、新聞印刷工場、医薬品製造工場、電気メーカー製造工場、ビール工場、食品工場、紙幣印刷工場、航空自衛隊基地、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)など、様々な見学会を実施してきました。

 見学会はやはり大きくて見栄えがするものが人気なので、自動車工場や発電所などの重厚長大産業が人気でした。日本の基幹産業は、昭和の終わりごろ重厚長大から軽薄短小(液晶パネル、半導体、携帯電話など)に移行しました。このころまでは、日本の産業レベルは世界トップレベルでした。Japan as No.1ですね。
計装業界もその一翼を担っていたと思います。
 現在は、情報と知識の時代と言われています。ビッグデータ、超高速低遅延(5G,IoT)、サイバー(インターネット)環境、知識の集積・人工知能(AI)、これらキーワードが示す情報と知恵の時代、さしずめ「多速仮知」なんていう4文字熟語で表せるかもしれません。計装士活躍のフィールドも、どんどんそちらにシフトしてきているはずなので、見学先もそれに合わせて変えていく必要があるでしょう。例えば、大規模データセンタ、スマートコミュニティ、コールセンタ、最新物流施設、最新競技場、バイオ関連、植物工場など、どうでしょうか。
 勉強会や研修会のテーマも同じことが言えますね。今後の企画・研修委員の方々に期待しましょう。

 仕事といいながら、遊びの要素大じゃないの?という声が聞こえてきそうですが、見学会に参加することによって、見聞を広めることができ、発見や気付きがあり、驚きや感動があり、アイデアが浮かび、明日への活力、モチベーションにつながっていくと私は思います。自戒も含めてですが、どうも技術屋さんは了見が狭いというか、視野が狭いところがありますよね。
 ぜひみなさんも計装士会のホームページで見学会の予定を調べて、周りの仲間を誘って、参加してみてください。
 最後になりますが、計装士会の益々の発展をお祈りいたします。