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活動報告(中部・北陸)

富士電機株式会社 鈴鹿工場

活動名富士電機株式会社 鈴鹿工場
実施日平成30年(2018年)2月5日(月) 10:30~17:00
場所富士電機株式会社 鈴鹿工場
  三重県鈴鹿市南玉垣町5520
参加者24名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中部・北陸地区担当幹事 渡辺 淳司
概 要

    (1) インバータによるファン・ポンプの省エネ手法
       富士電機(株)ドライブ事業部 伊藤主任
    (2) 省配線遮断器のご紹介  
       富士電機機器制御(株)事業企画本部 船橋担当課長
    (3)工場見学(ショウルーム、インバータ工場)
       ホームページ:http://www.fujielectric.co.jp/

1.はじめに

 平成29年度の中部・北陸地区計装士会見学会は、製品開発・生産技術開発の中核であるグローバルマザー工場として「ものつくり」をリードされている「富士電機(株)鈴鹿工場」を見学しました。
 開催日の前週より一段と寒さが厳しくなり、鈴鹿山脈の主峰御在所山に近い見学地のため降雪の心配がありましたが、皆様の暖かいご支援の賜物からか、晴天に恵まれました。
 見学地へは名古屋駅西口よりバスに乗り、名古屋高速、東名阪自動車道と乗り継ぎ、御在所サービスエリアへ休憩・昼食のため立ち寄り、往き帰りとも交通渋滞・トラブル等もなく順調に移動することができました。

2.見学報告

 (1)「鈴鹿工場」について
    鈴鹿工場は敷地面積約30万㎡、社員・協力会社含め1400名を有する工場であり、今年度は創業50周年を迎えるとともに、インバータ、回転機(モータ)、コンポーネントを手掛け海外生産拠点と連携し、国内外の安定供給を実現されています。
    さらに、「ものつくり」力の維持・強化に向け、継続的な人材育成にも取り組まれています。

(2)「講演」について

インバータとは、周波数を変化させてモータの回転速度を制御(可変)する装置であり、消費電力を抑えることにより省エネにつながります。
    講演では現場に合わせた最新技術を導入した様々な事例が紹介され、大きな効果が得られていました。
    また、主配線遮断器の紹介では多くのお客様からの要望に応えるべく、配線工数削減、品質・安全向上のスプリング端子製品および省スペース化、メンテナンス性向上の母線プラグイン機器の紹介がされ省工数化が実現できていました。

パワエレテクニカルセンター

(3)「工場見学」について     

   インバータ工場見学では、生産ラインでのプリント基板ハンダ付け、インバータ組立、および検査と内容も丁寧に説明していただき理解しやすかったです。
    多くの見学者からは生産ラインの効率を上げる工夫についての質問が多く、人員配置、技能者スキルマップの掲示、目標台数・実績のモニターへ表示と大変興味を持たれたように感じられました。

富士電機株式会社 鈴鹿工場 カタログより
3.おわりに

 当日の案内や講演をしていただきました、富士電機株式会社 鈴鹿工場始め、今回の見学会にご協力いただいた関係各位に感謝し御礼を申し上げます。

以 上

富士電機株式会社 鈴鹿工場 パワエレテクニカルセンターにて
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活動報告(九州・沖縄)

『計測・校正における不確かさの使い方』

活動名『計測・校正における不確かさの使い方』
講師
三興コントロール株式会社
計測制御サービス事業部 校正技術部
部長 田村 純 講師
実施日平成29年(2017年)11月10日(金)14:00~17:00
場所株式会社九電工 福岡支店 1F 多目的ホール
参加者19名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者九州・沖縄地区担当幹事 渡辺 猛
田村講師 講演風景
講演内容

テーマ   『計測・校正における不確かさの使い方』
  大きく5項目に分類
  1.計器と精度
  2.計測と校正
  3.初めての不確かさ
  4.試験、検査と校正
  5.ISO9001-2015と
    Risk-Base Management

1.計器と精度

①計器の種類
    ⇒センサ 計測機器 分析計この3つをまとめて「計器」と記述する。

②計器の性能と精度
    ⇒あらゆる計器は時間の経過と共に遷移の発生と感度も変化しやすくなる。
      計器の適確性を判断する際に最も重要視されるのが個々のメーカーが定めた独自の仕様でその仕様の代表的な項目が「精度」です。
      しかしドリフト、ゲインの変化と共に「精度」も変化する。

③精度の一般的なイメージ
           1) 確立が高いか、低いか
           2) 良いのか、悪いのか  
           3) 信頼性が高いか、低いか
   精度 ⇒   4) 正確か、不正確か
           5) 計器だと性能が良いか、悪いか
           6) 想った通りだったのか
           7) その他・・・

④精度に関係する用語
    1)バラツキ     : 数多いデ-タがバラバラになってしまう度合い
    2)カタヨリ     : 数多いデ-タがある数値に偏ってしまう度合い
    3)繰り返し性   : 計測・校正の手段が同一の時のデ-タ-の一致度
    4)再現性      : 計測・校正の手段が異なる時ンンンンのデ-タ-の一致度
    5)安定性     : 同一条件、同一手段の時の変化の割合、長期と短期がある
    6)直線性     : デ-タ間の直線関係
    7)ヒステリシス  : 前歴によって同一デ-タに差が生じること  

⑤精度の定義
    ⇒例えば1本のパイプの太さを一人の人間が、同じノギスで時間を変えて計測し、結果が一致する度合いが「繰り返し性」
    ⇒例えば1本のパイプの太さを複数の人間が、別々のノギスで計測し、結果が一致する度合いが「再現性」

⑥正確さと精密さの可視化
                       a) 繰り返し性
           1) 精密さ   ⇒  b) バラツキ
                       c) 再現性
   精度  ⇒ 

           2) 正確さ(真度)  カタヨリ

⑦計器の「使用」の外乱
    ⇒計器は時間の経過による部品の磨耗や現場の外乱における温度、湿度等の影響を受け性能が変化する。
    ⇒固有の性能 - 計器メ-カ-の工場出荷時迄
    ⇒使用の性能 - ユ-ザ-が現場環境で使った時

⑧様々な「精度」の記述
    ⇒カタログ記載の精度→カタログ精度
    ⇒計測した時の性能 →計測性能(精度)
    ⇒校正した時の精度 →管理精度

⑨計器の精度の意味
    ⇒カタログ精度数値<<<計測性能数値
      一般的に同一数値にはならない

⑩カタログ表記精度の認識
    ⇒メ-カ-が計器や計量機器の設計基準に適合した結果から決めた数値

⑪メ-カ-とユ-ザ-の思いの違い
    ⇒メ-カ-は設計基準でカタログ精度を決定、不特定多数のユ-ザ-の使用を想定
    ⇒ユ-ザ-は自分達の使用環境で計測した時どうなるかを知りたい

⑫計器を使う時考慮すべき事項
   1)長期安定性にすぐれているか?
   2)計測範囲の直線性が良いか?
   3)環境適格性(≒再現性)に優れているか?
   4)必用な管理制度(許容範囲)を決められるか?
   5)必用な品質管理期間を決められるか?⑬まとめ
   1)精度は計器の性能の一つ
   2)精度では表せない性能もある
   3)精度の一般的な定義は無い、しいて言えば「VIM」です。
   4)カタログ表記、計測時、管理精度の意味を理解する。
   5)使用者が精度をどのように捉えているか重要!

 

2.計測と校正

①計測(測定)と校正
    ⇒計測(測定)は 目盛りの無いモノの目盛りを付ける
    ⇒校正は 付けられている目盛りの検証

②計量計測用語集(VIM)から
    ⇒校正は 不確かさ表記が必須、誤差表記はダメ

③定義で言っている事
    ⇒より信頼性の高い標準で、被校正対象機器の付けられている目盛りを科学的、技術的に確認する事。

④標準の事
    ⇒校正での標準器、標準物質を総称してこの勉強会では便宜的に「測定器」と記述する。

⑤校正で被校正計器のこと
    ⇒DUTと記述する DUT:Device Under Test⑥校正の目的
   1)生産現場でDUTの使用後の特性確認(外乱影響)
   2)計測結果、分析結果の評価の参考情報
   3)計測結果、分析結果の履歴の確認
   4)設定した管理精度の確認
   5)製造工程の客観的数値情報の取得

⑦保全と校正
    ⇒保全(メンテナンス)
      製造工程の計器を信頼ある状態にする
    ⇒校正(キャリブレーション)
      DUTの計測履歴(外乱影響)の検証

⑧実際の校正   
            1) 現場  :  装置に設定されている環境でDUTを測定器と比較する。
     場所 ⇒
            2) ラボ  :  現場で使う測定器を定められた環境に於いて、更に信頼性の高い上
                      位標準と 比較する。

⑨現場での校正手順(SOP)の例(時系列)
    1)プレパレーション   ⇒ 校正手順の準備
    2)アイソレーション   ⇒ 隔離、安全措置(養生)
    3)キャリブレーション  ⇒ 目盛りの比較
    4)エスティメーション  ⇒ 結果の評価
    5)アジャストメント   ⇒ 調整・修正
    6)リストレーション   ⇒ 復旧、安全措置の解除
    7)データプロセッシング ⇒ 記録、整理
    8)エバリュエーション  ⇒ 基準との比較、審査
    9)レポーティング ⇒ 報告

⑩計器、計量機器の品質管理
    ⇒ISO9001  : 品質システムにフォーカスしたもの、製品品質や技術品質を審査するものではない、サービスが補記された。
    ⇒ISO10012 : 計器や計量機器を使う事が必用なセクションが準拠すべきもの。
    ⇒ISO/IEC  : 計器や計量機器を校正や試験、検査する機関が準拠すべきもの。
     17025

⑪校正の妥当性確認
    1)校正方法  : 異なる原理・方法で校正を行い同一の結果が得られること。
    2)校正方法  : 同程度の技量を持つ複数の担当者が同じ校正を行い、同一の結果が得られること。
    3)時間的間隔 : 同一の原理・方法で同一の担当者により時間間隔が一定で複数回の校正を行い、同一の結果が得られること。
    4)第三者機関 : 第三者的立場の外部校正機関により校正を行い、同一の結果が得られること。

3.初めての不確かさ

①新しい言葉の源
    ⇒「計量」と「不確かさ」
    1)VIM : 国際計量基本用語集
           前途、「計測と精度」を参照
    2)GUM : 計測における不確かさ表現の案内
            日本語ではガムという

②不確かさとは
     ⇒確かでない程度のこと。

③不確かさの提案
    ⇒世界的規模での貿易の自由化
      世界的に校正(測定)結果、試験結果のデータの表し方を統一しようという機運と約束。

④真の値は存在しない
    ⇒真の値は使用できなくなった。

⑤誤差の真実
    ⇒誤差=測定値-真の値
    1)ミクロ的に観れば観るほどバラついている。
    2)目盛りを読み取るのに、裸眼、ルーペ、顕微鏡で見ると各々違うはず。
    3)本当は「誰も」真の値などワカラナイ。

⑥バラツキとは
    ⇒カタヨリとバラツキ
      カタヨリ : 校正結果にもカタヨリは付きものです、しかし割りと簡単に計器で計ることが出来る。
             今までの誤差に相当し、偏差のことです。
      バラツキ : 不確かさのこと、その数値を算出するには複雑な過程が必用で、そのルールが
            「GUM」です。単純なバラツキ量をハカル測定器もあります。

⑦バラツキの数値化
    ⇒サンプルで推測する
    カタヨリ   : 単純な足し算引き算の計算
    バラツキ   : ちょっと面倒な、簡単的な統計処理の計算が必要
            *統計処理は正規分布グラフで考えます

⑧バラツキを知る方法
    ⇒計測値も校正値も実際は一定値ではなくバラツキを持っている。
    ⇒バラツキは統計学的にその程度をヒストグラムか正規分布曲線で示すことが多い。

⑨まとめ
    ⇒カタヨリは古典的な誤差表記の基本。
    ⇒バラツキは結果数値の評価の基本、信頼性の証、偏差の存在は認める
    ⇒バラツキの計算はGUMの指針に従う。

⑩検定とは
   1)一定の基準に照らして検査し、合格/不合格、価値や資格などを決定すること。
   2)新しく作られた軽量器や修理された計量器が、計量法で定める基準に適合しているか?どうかを検査する
     こと。

⑪校正結果の使い方
    ⇒測定、計測で使う場合 : 製作工業分野で多い
    ⇒校正で使う場合 : 製造(プロセス)工業分野で多い

⑫許容範囲(値)と不確かさの関係
    ⇒今までの出荷検査は信頼性評価はやってない、バラツキは無視!
     許容範囲(値)と不確かさは異なる概念!でも密接な関係がある。

4.試験、検査と校正

①検査・試験と校正の境界
    ⇒検査・試験 - 適合性の評価 - 規格・基準値
    ⇒校正     - 標準との比較 - 実証値

②これからの言葉
    ⇒「適合(格)性の表明(宣言)」が重要
      適合性評価(検査・試験・校正)などがその手段となる。試験・校正機器が使用している計測機器、分
      析計などはその手段のための標準器、標準物質である。
      許容範囲(値)と不確かさは異なる概念!でも密接な関係がある。

5.ISO9001ー2015版とサービス

①注目すべき点
    ⇒サービス(校正)分野への配慮 : 「製品」と「サービス」をわけて定義、違いを強調た。
      技術管理主体(リーダー)の存在とパフォーマンスの評価など。
    ⇒リスクベースの考え方が明確になった。 : 強みと弱みを明確にする。
      やはり”製品”の生産が中心です。

②サービス関係
    ⇒製品とサービス(試験・検査、校正)との関係が明確になった、製品の品質目標に対するサービスの対
     応。
    ⇒作業環境から「プロセス(工程)の運用環境」へ
    ⇒監視機器及び測定機器から。 「監視及び測定の為の資源(resource)」

③日本工業規格から「日本産業規格」へ
    ⇒日本のGDPの約7割をサービス業が占めている。
    ⇒「役務」としてサービス分野を対象に追加する。
    ⇒法律の名称を工業標準化法から「産業標準化法」に
    ⇒マークはそのまま使う。

④現状の品質管理システムは
   1)レガシーシステムの再評価 → 生産者側
   2)DUTか製品のCPの設定とその根拠
   3)DUTか製品の許容範囲(値)の設定とその根拠
   4)DUTと標準との校正の不確かさ(精度)比
   5)DUT、標準の校正間隔/期間/周期は
   6)その他

まとめ

不確かさを現場の校正で使う
   1)「不確かさ数値(バラツキ)」は引き取り校正事業者が理想的な環境で校正した結果
   2)現場では同じ「不確かさ数値」では計測や校正は出来ません。
   3)上記1)と同じ環境、同じ校正方法・手順を実現できれば添付された数値での計測、校正結果が期待でき
     ます。
   4)でも校正されていないより校正されている計器、測定器を使った方が「安心」だと思います!

所 感

今回の勉強会は、普段私達が工事を行う際、常に行わなければならない計測が題目になっており、 とても興味深く講義を聞かせていただきました。内容的にも様々な考え方や例えなどを挙げられ、 噛み砕いた言い回しにて判りやすく説明をしていただき非常に参考になりました。
  ご多忙中にもかかわらず、講師をお引き受け頂きました田村講師に厚くお礼を申し上げると共に、 今後とも益々のご活躍をお祈り申しあげます。

以 上

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活動報告(東北・北海道)

「計測・校正における不確かさの意味」

活動名「計測・校正における不確かさの意味」
講師
田村 純 講師
三興コントロール株式会社 計測制御サービス事業部 校正技術部 部長
実施日平成29年(2017年)10月25日(水)
場所ハーネル仙台 5F
宮城県仙台市青葉区本町2-12-7
参加者20名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者東北・北海道地区担当幹事 川崎 久
1.はじめに

 平成29年度東北・北海道地区の勉強会を、平成29年10月25日にハーネル仙台にて実施いたしましたので、ご報告申し上げます。

2.講習会内容

テーマ:「計測・校正における不確かさの意味」

   下記の5つの話題に分け、何気なく日常で利用していた 旧来からの「計器」「精度」「校正」の用語の本来の 意味や考え方、そして、新たに加わる「不確かさ」と 考え方やその意味を、専門的な見地から丁寧に解説、 ご教授いただきました。

   1. 計器と精度

   2. 計測と校正

   3. はじめての不確かさ

   4. 試験、検査と校正

   5. ISO9001-2015 Risk-Base Management

田村 純 講師
3.まとめ

 本講義を受講させていただき、大変勉強になりました。日常的に使用している「精度」や「校正」などの定義や本来の意味を、事例を交えてわかり易く解説頂き改めて考えさせられました。
 また、初めて「不確かさ」という考え方を教わり、世界での計測・校正に関する今後の規格化・標準化の流れなども勉強になりました。 最後に、ご多忙中にもかかわらず、講師としてご説明・解説頂きました田村 純様には厚く御礼申し上げるとともに、ご参加頂いた皆様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。                                              

以 上

勉強会の様子
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活動報告(東北・北海道)

東北電力㈱の大型蓄電池システムを利用した、電力系統への最適制御・ 管理技術開発拠点である、中央給電指令所及び西仙台変電所の見学

活動名東北電力㈱の大型蓄電池システムを利用した、電力系統への最適制御・
管理技術開発拠点である、中央給電指令所及び西仙台変電所の見学
実施日平成29年(2017年)8月25日(金) 13:00~16:30
場所東北電力株式会社 中央給電指令所
 宮城県仙台市青葉区本町1-7-1
東北電力株式会社 西仙台変電所
 宮城県仙台市太白区秋保町
参加者33名(内計装士会7名)
主催(一般社団法人)電気設備学会東北支部
協賛(一般社団法人)日本電設工業協会東北支部
(公益社団法人)日本技術士会東北本部電気電子部会
計装士会
報告者東北・北海道地区担当幹事 川崎 久
1.はじめに

 今回の見学会は、東北電力株式会社のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、一般社団法人日本電設工業協会東北支部、公益社団法人日本技術士会東北本部電気電子部会及び計装士会の共催で実施しました。
 見学した施設は、東北電力株式会社管内すべての電力需給運用及び系統運用を監視・制御する中央給電指令所と、大型蓄電池システムが設置してある西仙台変電所です。
 中央指令所では施設の概要と役割の説明をいただき、コントロールセンターと訓練シミュレータを見学させて頂きました。また、西仙台変電所では施設の概要説明と、平成27年に営業運転を開始した大型蓄電池システムを中心に見学をしました。
 その内容を、下記に報告いたします。

2.見学内容

 1)中央給電指令所の概要と見学について

 はじめに、東北電力様より同施設の概要と役割についてご説明を頂きました。
 同施設は、東北電力が電気を供給する東北6県及び新潟県の電力需給運用及び系統運用をコントロールする中枢であり、季節や時間で左右される電力需要に対応するために電力量を事前に予測し、変化する需要量と発電量を随時コントロールし、周波数及び電圧を安定させた品質の良い電気を供給するとともに、最も経済的な発電を図るため多様な従来方式の発電設備と再生可能エネルギーを利用した発電設備をベストミックスで運用するため、各発電所のコントロールを行っていました。

中央指令所での概要説明の様子

 また、国土の1/5をカバーする総延長60万kmに及ぶ送電網を監視するとともに、災害やトラブルに即時対応するため、電力潮流のコントロール及び他電力会社との広域連携など重要な役割を担っていることをご説明いただきました。
 見学では、この電力ネットワークを大画面で監視・制御する状況や、予測・監視・制御を担当する方々の働く姿を見学させて頂きました。コントロールセンターは5名を一班とし、3交代24時間体制で監視制御が行われていました。
 電力の需給運用は、最新コンピュータシステムを活用して導き出されたシミュレーションを利用していますが、最終的には当日のリアルタイムな状況が大型のモニターに写し出され、その膨大な情報をもとに人間が判断・コントロールしていることに少し驚き、感心しました。
 また、訓練シミュレータでは東日本大震災時に発生した状況をシミュレータ画面に再現をして頂いて、当日の緊迫した状況をリアルに体験することが出来ました。

 2)西仙台変電所の概要と見学について

 仙台市内中心部にある中央指令所での見学を終え、仙台市の西に位置する秋保地区にバスにて1時間ほど移動し、西仙台変電所に平成27年度営業運転を開始した大型蓄電池システムを中心に見学を行いました。
 はじめに、同施設の概要をご説明いただきました。
 変電所としては出力2,900MVAの規模を有し、500kV 送電網を繋ぐ最重要変電所で500kV、275kV、154kVの変電所としての役割を担うとともに、今回の見学の主体となる大型蓄電池システムを国内で始めて導入し、営業運転と連系した実証試験が行われている変電所で有り、設置されている変電所では最大規模の設備との事でした。

西仙台変電所での概要説明の様子

 この大型蓄電池システムの導入目的は、近年導入の進む再生可能エネルギーとの系統連携に安定化をもたらし、再生可能エネルギーの更なる導入拡大を目指すために設置されたもので、一般社団法人新エネルギー導入促進協議会公募の実証事業として運用されています。
 気象条件で出力が変動する風力・太陽光などの発電設備の影響を、従来の発電設備による周波数調整に加え、本設備の充放電により周波数変動抑制対策を行うことが最大の目的とされた設備です。

大型蓄電池設備の説明の様子

 現地を見学すると、多くの蓄電池コンテナが整然と配置された姿は壮観でした。
 その設置数は80台、その中には小型リチウムイオン電池をモジュール化したコンテナ盤が18面格納され合計容量20MWh出力20MW(短時間最大40MW)の能力が有ります。
 設置に当っては火災に備えての安全対策を施し、法的基準をクリアするためにご苦労されて現状のコンテナ形状での分散配置としたとの説明も有りました。
 また、監視制御を行う監視制御棟、昇圧用変圧器を備えた変圧器室、出力500kwのパワーコンディショナー(PCS)80台を配置するPCS室なども見学させて頂きました。
 監視制御棟は、先の見学先である中央給電指令所で算出された充放電量により制御されているとの事でした。

大型蓄電池設備の見学
3.おわりに

 今回の見学会で、ご協力頂きました東北電力株式会社様に感謝すると共に、お忙しい中、施設のご説明及び見学のご案内をして頂きました社員の方々にはこころより御礼申し上げます。                                              以  上

西仙台変電所にて(参加者一同)
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コラム

ライダー

株式会社ユアテック

電気設備部

小川 克郎

はじめに

 私とオートバイとの出会いは、昭和59年に25歳で普通自動二輪免許(中型)を取得し、ホンダのCBR400を購入して乗り始めたのが始まりです。年齢的には遅い乗り出しでしたが、まだ数人の友達がオートバイに乗っていました。
 当時は空前のオートバイブームで、「レーサーレプリカ」とか「ネイキット」と呼ばれるタイプのバイクが全盛を極めていました。
 また、今でも人気のある北海道へのツーリングもブームで、当時は「ミツバチ族」と呼ばれ、道内全域をライダーが走り回っていました。

1.ツーリング

私は今でもオートバイに乗り続けています。乗り続けるきっかけとなったのは初めて友達と2人で行った北海道へのツーリングです。
 お盆休みを利用してのツーリングであったためか、ライダーのほとんどが本州からのライダーで、対向車線を走ってきたライダーはほぼ全員がすれ違いざまに挨拶(ピースサイン)をしていました。また、観光地やコンビニの駐車場で知り合ったライダーと気軽に観光情報やツーリング中の出来事、バイクに関する話をしていました。
 この初めてのツーリングで、「知床半島の灯台」まで羅臼港より地元の小さな漁船に乗って、外洋の荒波を頭から被り濡れながら行ったり、現在は立ち入り禁止となっている「カムイワッカの滝」で滝壺温泉に入ったり、今では体験出来ないことをすることが出来ました。この時の「予期しない未知の体験」が、今でもツーリングを続ける要因になっています。
 いまでも私が全国をツーリングしているのは、有名な観光地を巡ることやツーリングスポットを走ることも楽しいのですが、ライダーと言う共通点により見ず知らずの人と気軽にコミュニケーションが出来ることが楽しみで乗り続けています。
 連休を利用してツーリングに出かける場合、1回のツーリングで3,000km位走るときも有りますが、この距離を車でドライブに出かけようとは決して思いません。
 しかし、車に比べるとオートバイは非常に過酷です。オートバイのシートは固く、長時間の走行時にはお尻が痛くなります。また、同じ姿勢でいるため、首、背中、腰、膝も疲れて痛くなります。
 天候が良ければ爽快なのですが、夏はエンジンの排熱で暑いし、冬は外気に体が曝されているうえ走行による風のため非常に寒いです。また、横風が吹けば車体が横に流され、雨が降れば前が良く見えません。常に「自然との闘い」が続きます。
 バイクに乗り続けることは、「苦行」を行っているように感じることも有ります。

北海道 国道232号線 (オロロン街道)
北海道 国道232号線 (三国峠)
山口県 角島大橋
島根県 県道338号線

2.ライダーハウス

ツーリングの際に、私が宿泊施設として利用しているのは「ライダーハウス」です。ライダーハウスとは、自転車乗り(チャリダー)かオートバイのライダーを主な対象とした簡易の宿泊施設です。利用料は、無料から3,000円程度で全国に有りますが、特に北海道と長野県に多いようです。
 ライダーハウスは営利目的で無く、宿主の善意により行われている場合が多く施設の形態も多種多様です。民宿や民家の1室から崩壊しそうなあばら家まで当たり外れがあります。夏のエアコン、冬の暖房も期待できません。
 また、基本的には寝袋持参の雑魚寝ですが、寝具が有るところも有ります。
 私はバイクの荷物を出来るだけ少なくしたいため、寝具が有るところを利用するようにしています。
 ツーリングシーズン(春から秋)の休日は混雑しており、一人あたりのスペースが狭くてゆっくり休めないことも有ります。年寄りの私には体力的にかなりきついのですが、一般の宿泊施設を利用せずライダーハウスを利用しています。
 利用する理由は、利用料が安いこともありますが、同宿するライダーとの会話(宴会)が楽しいからです。
 年齢、職業、出身地、性別も違う見ず知らずの人間が出会い、全国各地の情報や自分が経験出来ないこと、自分では考えつかないことを聞くことが出来るからです。

ライダーハウス (北海道)
ライダーハウス (北海道)

3.ライダー

ライダーには、いろいろなタイプの人がいます。私のように一人で全国各地をツーリングしている人、タンデムツーリング(2人乗り)を楽しむ夫婦、いくつになっても峠を攻めている人、「自分探しの旅」と称してカブ(ホンダのスーパーカブ50cc)で全国一周をしている若者、全国一周の途中で特定のライダーハウス(沼と称されている)に埋没する若者、全国の神社・寺院の朱印を集めている人、ライダーであるという優越感に浸っている人などなど。
 近年は20代のライダーよりも、若いときは金銭的に大型オートバイが買えなかった人、または昔の思い出(過去の栄光)を再現すべく50~60代でまたオートバイを乗り始めた「リターンライダー」、旧型の(一部リメイク若しくはデコレーションした)オートバイをこよなく愛している「旧車会」のメンバーが沢山います。
 皆さん思い思いに、仲間と若しくは一人で、それぞれ走りたいところを、それぞれのペースでツーリングを楽しんでいるようです。

北海道 宗谷岬
福島県 高速道路パーキング

最後に

近年、ライダー人口は年々減少しており、リターンライダーが居なくなる20年後位には絶滅危惧種に指定され、ライダーは「死語となるのでは」と懸念しています。
 私は将来の絶滅危惧種の一員として、経済的に、体力的に許す限り、未知の体験や未知の人種を求めて乗り続けたいと思います。
 オートバイは決して安全で快適な乗り物ではありませんが、その機動性、操作性において非常に楽しい乗り物です。興味のある方は、一度チャレンジしてみては如何でしょうか。

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活動報告(中部・北陸)

「計測・校正における不確かさの使い方」

活動名「計測・校正における不確かさの使い方」
講師
三興コントロール株式会社
  計測制御サービス事業部 校正技術部
  部長 田村 純 様
実施日平成29年(2017年)7月31日(月)13:30~17:00
場所ウインクあいち
名古屋市中村区名駅4-4-38
参加者19名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中部・北陸地区幹事 柏原 達司
講演内容について

  ・計 測
  ・精 度
  ・校 正
  ・不確かさ
  ・試験・検査
  ・ISO9001-2015

アンケート結果

  「内容の理解」については、今までの漠然とした考え方を根底から変えてしまうと言っても良いような内容ですので、直ぐには理解出来ない部分があったようです。しかし、参加者の業務との関連性についてみますと「概ね役に立つ」、「役に立つ」との回答が多くあり、今回の勉強会についての全体評価は「とても面白かった」との回答が一番多くありました。

講演会風景
講演会風景
所 感

  今回の勉強会は、「計装」の基本ともいえる内容の講義でした。
  システムを「計画」、「工事」、「維持管理(運用)」に分けるとすれば、特に長期にわたる「維持管理(運用)」では大事な部分であり、計器の「精度」、「校正」、及び信頼性を数値化した「不確かさ」については大変に貴重な講義でした。
   日本工業規格(JIS)制度から日本産業規格(JIS)へ。また、「工業標準化法」も「産業標準化法」とし、2018年に改正が予定されています。
   SIの基本単位についても物理法則を用いて定義する方法がとられている現在、質量については「国際キログラム原器」が未だ基準になっている現状から、国際基準が2018年に変更が予定されていることも「制度」、「計測」について改めて意識することが出来ました。
   3時間以上に渡る講義でしたが、皆、聴講を楽しんでいるように見えました。また今回は、非常に面白かったという意見もありました。
   最後になりましたが、お忙しい中、講義をして頂きました田村純様には、今後の更なるご活躍を祈念し、改めまして御礼を申し上げます。有難う御座いました。

以 上

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活動報告(四国)

『計測・校正における不確かさの意味』

活動名『計測・校正における不確かさの意味』
講 師
田村 純 講師
 三興コントロール㈱ 計測制御サービス事業所 校正技術部 部長
実施日平成29年(2017年)7月14日(金)14:00~17:00
場所サンポートホール高松 62会議室
 香川県高松市サンポート2-1
参加者22名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
はじめに

 四国地区では、平成29年度上期の地区活動として、7月14日に勉強会を開催いたしました。以下に概要を報告いたします。

テーマ内容

  ① 計測と精度
    ・計測と計量の用語や計測の意味
    ・直線性の評価が大切
    ・まちがえやすい言葉「繰り返し性」、「再現性」
    ・精度は、正確さ(カタヨリ)と精密さ(バラツキ)の度合いを示す。
    ・メーカーは設計基準でカタログ精度を決定するが、ユーザーは自分たちの使用環境で計測した時の性能が知りたい。

  ② 計測と校正
    ・計測(測定)は目盛の無いモノに目盛を付け、校正は付けられている目盛の検証である
    ・校正とは計器の性能評価や性能保証する行為ではない
    ・保全(メンテナンス)は製造工程の計器を信頼ある状態にすることで、校正(キャリブレーション)は計器の履歴データの特性の検証
  ③ 初めての不確かさ
    ・不確かさとは、確かでない程度のこと
    ・不確かさのイメージ
     名人の結果:的の中心(上位標準値)に近く(カタヨリが小さく)集まって(バラツキが小さく)当たっている。
     初心者の結果:一応、的の中心を狙っているがカタヨリが大きくバラツキも大きい。
    ・真値は存在しないので、誤差は求められない
    ・不確かさ評価では、なるべく信頼性の高い(≒真の値?)校正値を求め る努力をする
    ・不確かさとは、バラツキの存在を仮定して、測定や校正を考えようという「約束」事。

  ④ 不確かさの使い方
    ・不確かさの悪い使い方
     「このデジタル温度計は○○○の不確かさをもっていた。」
    ・正しい使い方
     「このデジタル温度計は「校正証明書」に記載してある条件では100.00℃ と表示したときに0.03℃の『不確かさ』を持っていた。

  ⑤ 校正結果の見方
    ・校正値は多くの観測値(採取データ)の「平均値」
    ・観測値は少なからずバラついており、バラツキ量を統計的に処理して、数値化したものが「不確かさ(数値)」になり、校正値の信頼性の目安となる。

  ⑥ 試験、検査と校正
    ・計測、校正から検査・試験へ
     標準器を用いて対象計測器を計測、校正すると、不確かさを伴った計測、 校正データが得られる。そのデータを適合性評価基準(客先要求、メーカ ー仕様、誰もが認める基準)で合否判断して、適合性評価
     書の試験・検査 データとする。

  ⑦ ISO9001-2015
    ・2015年度版では、証拠書類ではなく、何故、その数値にしたのか? 何 故、そのアウトソースを選んだのか、理由を求められる。

田村講師
勉強会の様子
所 感

 講師の田村様は、三興コントロール株式会社 計測制御サービス事業部校正技術部の部長で、計測・校正分野に日本で初めて不確かさ(Uncertainty)という概念を持ち込んだご本人であり、校正に必要な機器は、無ければ開発している部門の長でもあられ、仕組みや規格を作る側にも精通していらっしゃいます。
 その田村様に今回は、「計測、校正における不確かさの意味」と題して新概念の「不確かさ」についてご紹介いただくとともに、これまでの精度や誤差との違いおよび「不確かさ」の使い方などについて、内容の濃いご講演を頂きました。
 計測や校正において「不確かさ」という用語を最近、聞くようになりましたが、誤差や精度と、どう違うのか、どういう概念なのか、気になってはおりましたが、良くは知りませんでした。
 今回の勉強会で良くわかったというには、難しい概念ですが、「不確かさ」とは、計測値や校正値の信頼性を示すための指標で、カタヨリが小さくバラツキが小さい=不確かさが小さく信頼性が高いということ、また、校正とは、ある標準的な環境で、計測器が標準器と比較してどの程度の測定ができているのかを確認するところまでで、計測器の調整は含まないことがわかり、今まで勘違いしていたことも明らかになりました。
 今回の講演を聞いて、現在のグローバル化の流れの中で、日本でも「不確かさ」の概念が校正や計測の分野で当たり前になっていくとともに、校正結果を踏まえて、より現実的な計測器の管理精度を、使用環境に合わせて自主的に設定、管理することが求められるようになっていくと感じました。
 最後に、ご多忙中にもかかわらず講師をお引き受けいただいた田村様に厚くお礼申し上げるとともに、講師ならびにご参加いただいた皆様の今後とも益々のご活躍をご祈念致します。

以 上

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活動報告(中国)

『校正における不確かさの使い方』

活動名『校正における不確かさの使い方』
講師
田村 純 講師
  三興コントロール㈱
  計測制御サービス事業部 校正技術部 部長
実施日平成29年(2017年)7月13日(木)14:00~17:00
場所㈱中電工 本店電気ビル 11階会議室
  広島県広島市中区小網町6-12
参加者23名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中国地区担当幹事 久城 啓史
概 要(項目)

 【内 容】
     ① 計測と精度
     ② 計測と校正
     ③ 初めての不確かさ
     ④ 校正結果の見方
     ⑤ 試験、検査と校正
     ⑥ ISO 9001、ISO 17025

   標記の講義内容に対して、アンケート結果(回答22名)
    1)一番興味があった件は
     ①真の値は存在しない‥‥‥‥‥‥・・・・・ 7名
     ②偏差(誤差)とバラツキ‥‥‥‥・・・・・・・・・ 5名
     ③不確かさの定義‥‥‥‥‥‥‥‥・・・・・ 3名
     ④精度の定義‥・・・・‥‥‥‥‥‥‥‥‥・2名
     ⑤校正について‥‥‥‥‥‥‥・・・・・・・・・・2名
     ⑥計器使用における外乱‥‥‥‥‥‥‥・ 1名
     ⑦有効期限の意味‥‥‥‥‥‥‥‥・・・・・1名
     ⑧ISO 17025について‥‥‥‥・・・・・・・・・・・1名

    2)勉強会の希望テーマについて
     ①海外のプラント計装について
     ②品質保証(QA)について
     ③計装工事の実例
     ④計測・校正機器の構造と使用方法
     ⑤計装工事の今後

田村講師勉強会の様子
所 感

 多数の方が、「不確かさ」についての分かり易い説明と奥深い内容に 興味を持ち、知識が広がったと書かれていました。
 また、「不確かさ」=「誤差」と思っていた私も、精度と校正および 国際標準の流れついて分かり易く説明していただき、その奥深さに魅了 されました。
 最後に、今後とも、田村先生による計装士のための講義継続と、益々 お元気で活躍されることを切に願います。

以 上

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活動報告(近畿)

第1部「化学・石油精製プラントの運転中の事故防止の考え方」 第2部「プロセスプラントにおける『ものずくり×loT』を考える」

活動名第1部「化学・石油精製プラントの運転中の事故防止の考え方」
第2部「プロセスプラントにおける『ものずくり×loT』を考える」
講師
第1部九州大学 名誉教授 工学博士
 松山 久義 様
第2部アズビル㈱ アドバンスオートメーションカンパニー
 SSマーケティング部 2Gr グループマネージャー
 高井 努 様
実施日平成29年(2017年)7月7日(金)13:30~16:00
場所新梅田研修センター
 大阪市福島区福島6-22-20
参加者81名 (計装士会12名)
主催(一社)日本計装工業会
協賛計装士会
報告者近畿地区担当幹事  三好 真二

 平成29年度近畿地区上期活動として、(一社)日本計装工業会主催の「特別講演会IN大阪」に共催という形で参加させて頂きました。
 第1部では、プラントの運転中に発生する保安事故を対象にそれを防止する仕組みの理想的構造と現実の構造について、現在の技術レベルおよび経済状況という制約下で実現に努力すべき現実的な事故防止の仕組みの構造について、特に計装に関係のあるところを中心にご説明頂きました。
 第2部では、日本政府が掲げる「超スマート社会」の実現に向けて物凄いスピードで進化し続けている中で、ものづくりの現場として「超スマート工場」とはどういうものか、その実現の ためにはどういうことを考えていかなければならないかについてお話頂きました。

講演内容

 第1部:化学・石油精製プラントの運転中の事故防止の考え方
   1.はじめに
   2.事故防止の仕組み
     2.1 設計中心の事故防止の仕組み
     2.2 運転中のプラントの事故防止の仕組み
      2.2.1 危険源の列挙
      2.2.2 引金事象の分類
      2.2.3 多重防御層
      2.2.4 現実の多重防御層の構造
      2.2.5 事故の分類
      2.2.6 事故防止へのアプローチ
   3.引金事象の列
     3.1 外乱の列挙
     3.2 誤操作の列挙
     3.3 故障の列挙
     3.4 誤作動の列挙
   4.多重防御層内の危険源のリスク評価
     4.1 基盤層内の危険源
      4.1.1 基盤層の分解
      4.1.2 誤操作防止(L0(B))内の危険源
       4.1.3 故障防止(L0(C))内の危険源
      4.1.4 誤作動防止(L0(D))内の危険源
     4.2 第1層内の危険源
      4.2.1 第1層の分解
      4.2.2 外乱防御・影響緩和(L1(A))内の危険源
      4.2.3 フールプルーフ(L1(B))内の危険源
     4.3 第2層内の危険源
      4.3.1 第2層の機能不全と危険源との関係
      4.3.2 対応操作実行中の誤操作とその危険源
      4.3.3 対応操作実行中の誤操作防止の活動
      4.3.4 環境整備
      4.3.5 対応操作実行中の誤操作防止の信頼度
     4.4 第3層内の危険源
      4.4.1 第3層の危険源の分類
      4.4.2 設備の能力不足
      4.4.3 設備の故障
      4.4.4 保安設備作動中の介入
       4.4.5 第3層の信頼度
   5.まとめ
     5.1 漏洩事故の防止
     5.2 第2層と第3層の入れ替え
     5.3 外乱防御・影響緩和のバックアップ
     5.4 実現に努力すべき多重防御層の構造
   6.残された課題

 第2部:プロセスプラントにおける『ものづくり×IoT』を考える
   第1章 今、何が起こっているのか
     ●技術ブレークスルー
     ●主要国の動き
     ●世界に先駆けてた『超スマート社会』の実現(Society 5.0)
     ●未来投資戦略2017から見えてくる超スマート工場
     ●社会の進化は加速
   第2章 ICTやAIの発展と人の役割
     ●ICTとAI
     ●AIの正体
     ●AIの限界
     ●AIと人のリスク要因の比較
     ●AIと人の相補関係
     ●10年後のプラント運転を考える
   第3章 超スマート工場の運転管理
     ●日本のプラント運転管理の現状と課題
     ●ものづくり×IoT 3つのポイント
     ●熟練運転員の叡智を継承・超越する「IoTエージェント」
     ●IoTエージェントを司る「データエンジニア」
     ●データエンジニアを支援する「スペシャリストネットワーク」
   まとめ
     ●超スマート社会と呼ばれる第5次社会は、明確にその姿を現し、物凄いスピードで進化し続けていくであろう。
     ●その真っただ中にいる今、ものづくりの現場を「超スマート工場」として進化させるためには、まず、今の業務をしっかりと分析し、その課題と課題解決時の得られる価値を見据えることが重要である。
     ●そして、課題解決に適合する手段として、最新の技術や既存の技術の応用による現場毎の第二、第三の目となるIoTエージェントを導入していくことが鍵となると考える。
     ●今のAIは強力なパターン処理マシン。制約は有る。
       ⇒ 進化を続けるためには、人の関与が必要。
       ⇒ AI(やICT)と人との相補関係が生産に価値を与える。人の仕事の価値を高める。
       ⇒ IoTエージェント、データエンジニア、スペシャリストネットワークが連携する環境の構築。
     ●第5次社会は、これまでの働き方を変える時代でもある。
       ⇒ 物質、エネルギー、情報と時代とともに重要視する対象は変化してきた。
       ⇒ 第5次の社会、そして工場は、人を中心とした価値をより重視する社会へと進化する。
     ●超スマート工場の実現とは、IoT技術活用を考える以前に、スマートな人の行動、働き方を考え、大きく
      変革することで、人にとってより豊かな社会を築くための礎となる新しい製造スタイルの創造であるか
      もしれない。

所 感

 全体で約2時間、各1時間程度の講演となりましたが、それぞれ非常にボリュームある内容だったので、あっという間に時間が過ぎ去りました。アンケートからも、もう少し時間があれば良かった、もっと詳しく聞きたかった、という感想も有り、大変有意義な講演会となりました。
 計装士会としても、今後さらに、有益な情報提供、情報交換の場であるように講演会、見学会 等を企画、開催していきたいと思います。
 最後になりましたが、今回の講演会にご尽力いただきました松山先生、高井先生、(一社)日本計装工業会殿の関係者の皆様と計装士会の関係者の皆様には心より感謝と御礼を申し上げます。

以 上

瀬尾専務理事 挨拶
松山先生 講演風景
高井先生 講演風景
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活動報告(関東・甲信越)

「計測・校正における不確かさの使い方」

活動名「計測・校正における不確かさの使い方」
講師
田村 純 講師
  三興コントロール㈱ 計測制御サービス事業部 部長
実施日平成29年(2017年)3月8日(水) 14:00~17:00
場所虎の門電気ビル会議室 (地下1階)
  東京都港区虎ノ門2-8-1
参加者31名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者企画・研修委員 山本公一
講演内容

 1. 計測と精度
   ・計測と計量
   ・計測・計量、校正に関する用語の統一
   ・精度とは?
   ・精度の定義 ・センサ、計測機器と分析計の性能
   ・まちがいやすい言葉
   ・カタヨリとバラツキ
   ・計測の意味
   ・計器の使用目的
   ・計器の性能(仕様)
   ・様々な「精度」の記述
   ・カタログ表記の精度とは

2. 計測と校正
   ・保全と校正
   ・2つのはかる
   ・現代的な校正の定義
   ・定義で言っている事
   ・校正の目的
   ・本当の校正は「しつこい」のです
   ・比較と校正
   ・実際の校正
   ・校正の「方法」と「手順」
   ・温度計の比較校正例
   ・校正行為の明確化
   ・校正の実現のために
   ・現場での校正手順の例(時系列)
   ・校正の意味について
   ・校正値とは
   ・標準値は作るもの
   ・標準値を作り出すことの難しさ
   ・計器を使う時(私見)
   ・校正と調整
   ・校正の妥当性確認
   ・計器、計量機器の品質管理

3. 初めての不確かさ
   ・「不確かさ」の出現
   ・不確かさのJIS規格
   ・GUM(ガム)
   ・GUMの中の測定と校正
   ・不確かさ評価
   ・表示が要求される場面
   ・何故「不確かさ」なのか
   ・信頼できる数値
   ・カタヨリとバラツキ
   ・誤差の事実
   ・GUMの根底
   ・表す数値の信頼性
   ・不確かさのイメージ
   ・バラツキ
   ・考え方の変化
   ・バラツキが重要な訳
   ・バラツキの見える化とは?
   ・統計の考え方
   ・標準値と校正値の関係
   ・バラツキ量の計測と校正の足掛かり
   ・不確かさと「トンボ」表記
   ・バラツキは校正すると大きくなる
   ・主流はどちらか
   ・計器と性能
   ・不確かさ算出の基本
   ・具体的なバラツキとは
   ・校正時のバラツキ要因
   ・不確かさ評価方法の教育

 4. 不確かさの使い方
   ・不確かさのイメージ
   ・誤差と不確かさ
   ・検定とは
   ・不確かさを表現する際の注意
   ・不確かさを使う時に
   ・校正結果の不確かさ
   ・計測、校正と不確かさ
   ・製作工業と製造工業の差
   ・計測と校正のギャップ
   ・現場での校正の場合
   ・現場の不確かさ要素
   ・偏差(誤差)対 不確かさ
   ・使用場面による不確かさ数値の違い
   ・ある計器メーカーさんの精度表記
   ・「不確かさ」を使う場面

 5. 校正結果
   ・出回っている様々な校正の書類
   ・校正証明書の例
   ・校正結果の例
   ・校正に必要な文書
   ・校正証明書中の用語
   ・新JIS的・・・これからの表記方法
   ・不確かさ表記の一般的なルール
   ・校正結果の情報

 6.試験、検査と校正
   ・検査・試験と校正の境界
   ・検査・試験と校正の違い
   ・計測、校正から検査 ・試験へ
   ・CP設定の重要性
   ・判断するのは専門家
   ・メーカーの出荷検査も
   ・許容値と不確かさの違い
   ・許容値と不確かさの関係
   ・点(距離)から巾へ
   ・判定基準と不確かさ
   ・2つの品質管理手法の存在
   ・許容値と校正値
   ・不確かさと他のデータ

田村講師
田村講師
奥住副代表挨拶
所 感

 講義の前に奥住計装士会副代表幹事挨拶のあと、田村講師よる「計測、校正における不確かさの使い方」の勉強会を開催しました。アンケート結果にもあるように今回のテーマが参加者の業務に直結している上、意外と知らない、重要な内容であったため、長い時間にも関わらず、最後まで興味深く受講することができました。
 同じ【計測・不確かさ】といったテーマに関しても、計測器メーカ・製造メーカ毎に考え方、対応が異なり、施工・保守といった業務を行う側としても、対応方法・考え・手順等を明確にしなければならないと強く感じる講習となりました。
 今回の勉強会にお忙しい中、ご出席頂きました会員皆様と計装士会関係者の皆様に感謝と御礼を申し上げますと共に、田村講師様にはご多忙中にもかかわらず貴重なご講演を頂きありがとうございました。

以 上