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コラム

お城探訪

高砂熱学工業㈱

東京本店 電気計装部

松原 正義

 はじめに

 歴史好きでなくても、NHK大河ドラマ好きは多いかと思います。大河ドラマには、必ずと言っていいほどお城が出てきます。昨年の大河ドラマ「真田丸」のオープニング画面は、雲海を望む山城で現存天守が残っている備中松山城でした。
 今回のコラムは、「お城」について。

1、お城とは

 お城といえば壮麗な天守や櫓群の建物や石垣と思われるが、 城の本質は敵を防ぐことを目的とした戦闘施設、防御施設である。近代城郭は江戸城の最初の築城者太田道灌から進化が始まり、織田信長の安土城、豊臣秀吉の大坂城と続き、関が原合戦以降も城郭建築ブームは続いていく。
 江戸期に存在した城は150程度といわれているが、その9割は大坂城以降30年間に築かれたか、改修されたものである。

2、築城 ~城造り~

1)縄張(なわばり)

 城は、「縄張」と呼ばれる設計図をもとに曲輪(くるわ:城の区画)の配置、掘割、建物や城下の町割までを含めた城つくりの全体的な設計計画をもとに造られる。城の構成として土塁・石垣といった塁壁、堀、虎口(出入口)、櫓、御殿、天 守などの建築物がある。

2)普請(ふしん)

 普請とは、城の基礎造りで、石垣、掘割などの土木工事を示す。江戸城や大坂城では各大名に天下普請を命じ、各大名は大きな石を運び各大名家の目印を刻印にて力を誇示した。

3)作事(さくじ)

 門、塀、櫓、御殿、天守等の建築物をつくる作業を作事という。我々が城に惹かれる大きな部分がこの作事にて造られたものである。

3、登城記

1)丸亀城(香川県丸亀市)

 日本一の高さの巨大な石垣と現存12天守の1つで小ぶりな天守の丸亀城。
 標高66mの亀山に建ち、「扇の勾配」と呼ばれる高石垣が見所。大手門から天守を望むとかなりの距離に見えるが、城内は公園として整備されており、適宜な散歩感覚で登城できるのも魅力である。

丸亀城

2)備中松山城 (岡山県高梁市)

 臥牛山にある日本三大山城で、本丸は標高430mに位置し、現存する12天守の中では最も高い場所に建つ雲海でも有名な城である。前記したように、一部CGは使われたものの、NHK大河ドラマ「真田丸」のオープニングに使われた城で、本丸まで行くには、駐車場から約20分の登山となり、自然の岩盤を利用した大きな石垣が見えたときの感動はひとしおである。
 また、別の登山道の途中には、あの大石内蔵助が城引渡しの談判に行く途中に休んだ腰掛石も残っている。

備中松山城

3)熊本城 (熊本県熊本市)

 名君・加藤清正が築城した天下の名城である。武者返しといわれる石垣は、一見揺るやかながら、上にいくに従って角度を強め急勾配となる。
 昨年4月の熊本地震により、この石垣、天守、櫓が大きな被害を受けたのは記憶に新しいところである。

4)国宝犬山城 (愛知県犬山市)

 木曽川のほとりに建つ城で別名白帝城と呼ばれる。対岸は、岐阜県(美濃)で国境に位置し、戦国時代は争奪が繰り返された。小さな天守だが、現存する12天守の1つで木曽川の対岸から見ると美しい天守である。
城下町もきれいに整備されおり、是非訪れて頂きたい城である。

熊本城
犬山城

まとめ

 お城には、その外観や建築物として魅力だけでなく、奥深い歴史が詰まっている。領土を拡大しようとする武士の野望、また敗れて落城する領主たちの気持ちが多く刻まれてる。お城を探訪することで、少しでも歴史を感じることができればと思う。

参考文献
 (1) 歴史発見Vol3 デーィプな城発見 ㈱学研パブリッシング
 (2) 日本の名城を往く  男の隠れ家特別編集 ㈱三栄書房

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活動報告(近畿)

量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所

活動名量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所
実施日平成29年(2017年)2月23日(木) 13:00~17:30
場所量子科学技術研究開発機構 関西光科学研究所
  京都府木津川市梅美台
参加者13名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者近畿地区担当幹事 大久保 精之
1.はじめに

 平成28年度近畿地区の活動として、2月23日に上記見学会を開催しましたので、以下に概要を報告いたします。

2.見学内容

 (1) 見学施設概要
 (2) 実験施設の見学
 (3) スーパーサイエンスセミナー
 (4) レーザーでコンクリートの健全性の検査を遠隔・高速で行う

3.関西光科学研究所(木津地区)

 (1) 見学施設概要 
    関西光学研究所は、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 量子ビーム科学研究部門のなかでレーザー光を利用した研究を行っている施設です。
    レーザー光とは、空間的にも時間的にも同じ波長を集めた光りのことです。同研究所では、世界トップクラスの極短パルス超高強度レーザーと1秒間に千発のレーザーパルスが繰り出せる高平均出力ピコ秒パルスレーザーの2つの特徴を持ったレーザー光発生装置を有し、イノベーションの創出に向け産業・医療応用に向けた研究を行っていました。

関西光科学研究所及びKARENレーザー (同HPより)
施設概要説明
レーザー光発生装置
非侵襲血糖値センサーの開発

 (2) スパーサイエンスセミナー概要
    セミナーは、レーザーでコンクリート内部の欠陥を素早く検知する技術の開発で、「振動励起レーザー」の照射により、トンネルコンクリート壁を振動させ、内部の欠陥に起因する特異な振動を「計測用レーザー」で検知することで、コンクリート内部の欠陥情報を画像として取得するものでした。
    現在は検査の速さが人の手による打音法に比べ50倍速いレベルに達しており、今後は更に高速かつレーザー光の強度を高めコンクリート検査の深さ方向を60mmから100mmに高めたいとのことでした。

レザー欠陥検出法のイメージ (公財)レーザー技術総合研究所提供
4.おわりに

 見学会に参加頂いた皆様からアンケートで、この見学会を通じて見識・知見を広めることができ参加してよかった、次回も参加したいとのご意見を受け有意義な見学会になったと感じました。
 最後に、関係各所の皆様のご協力で無事に見学会を遂行することができました、厚くお礼申し上げます。

以 上

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活動報告(中国)

「株式会社日立製作所 笠戸事業所」

活動名「株式会社日立製作所 笠戸事業所」
実施日平成29年(2017年)2月22日(水)9:30~17:00
場所「株式会社日立製作所 笠戸事業所」
 山口県下松市大字東豊井794
参加者23名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中国地区担当幹事 久城 啓史
1.はじめに

 今年度は山口県下松市の日立製作所 笠戸事業所を訪問しました。
 日立笠戸事業所は、鉄道車両を製造する工場で、JR、民鉄向けを問わず幅広く扱い、新幹線向けの車両を多く製造し、他のJR電車車両及び阪急電鉄,東武鉄道等の車両や各種モノレールの製造実績があり、現在は、英国向けの高速車両も製造を行っている。
 車両は、リサイクル性に優れた軽量アルミ素材を採用し、新接合技術でゆがみが少なく無塗装でも美しい車両となっています。

2.施設概要

 山口県下松市の南部、笠戸島の対岸に工場群を構える。
敷地面積:約52万㎡。 製造された車両は専用線を通じて山陽本線下松駅から全国に発送(甲種輸送)される。
なお、新幹線車両は工場内の岸壁から、海外向け車両は工場近くの岸壁(徳山下松港)から船積により発送される。
現在は、電車車両の製造が主力となっているが、かつては蒸気機関車、電気機関車、ディーゼル機関車、気動車、客車、貨車の製造も行っていた。

3.見学内容

 まず、会議室で笠戸事業所の説明と会社概要のビデオを視聴し、バスで製作工場施設へ移動しました。最初はアルミ車両本体の組立工程について説明を受け、真近での無垢 車両外装に圧倒され、改めて大きさを実感しました。
 ここで、アルミの接合が溶接ではなく摩擦による特殊な接合技術で大型の接合でもひずみの出ない技術を教わりました。
 次に車両先端部の見学では、アルミの見事な曲線部、内面を格子状に削り出すことで 補強を行っていること、また海外仕様では,衝突時の対策も考慮された仕様となっていることも説明がありました。
 次の工程では、車両下部の許容スペースでの機材組込とケーブル配線及び配管関係の見学を行い、ボルトの締付は規定トルクによる締付をタブレットで確認して個々の締付データを記録し、最後に打音による音でも確認するというダブルチェックで、品質管理を行っている説明を受けました。その後の塗装された車両工場では、その色と艶に魅了されました。
 一連の製造工場の見学を終え、バスで移動し歴史記念館を拝観させていただきました、館内では、創立以来の製品模型や展示物が一同に並び深い歴史の変遷に感動しました。
 最後に歴史記念館近くのモノレールを背景に集合写真を撮らせていただき、その後会議室に集合して全体の説明を受け、そのスケールの大きさに興味深々で多くの質問が参加者の関心の高さを示していました。

4.おわりに

 この度は、中々見る機会のない鉄道車両の製造工程を拝見させていただき、その芸術的な車両に圧倒されました、見学後の参加者アンケートでも、多くの皆様が良い見聞をさせていただき、とても有意義だったと書かれていました。
 終わりに、この見学会にご協力いただきました、㈱日立製作所中国支社及び笠戸事業所の皆さま方にはこの紙面をお借りして厚く御礼申しあげます。

以 上

歴史記念館近くのモノレールを背景に集合写真
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活動報告(関東・甲信越)

① 筑波宇宙センター ② アサヒビール工場

活動名① 筑波宇宙センター
② アサヒビール工場
実施日平成29年(2017年)2月17日(金) 9:00~18:00
場所① 筑波宇宙センター
  茨城県つくば市千現2-1-1
② アサヒビール工場
  茨城県守谷市1-1-1
参加者31名(うち計装士会14名)
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者企画・研修委員 山本公一
1.はじめに

 今回は茨城県つくばエリアにある「筑波宇宙センター」および「アサヒビール茨城工場」の見学会を実施しました。
参加者は総勢31名、うち計装士会からは幹事を含め14名が参加しました。
 当日は東京駅新丸ビル前を定刻にバスで出発し、首都高速・常磐自動車道を利用し、最初の見学場所である筑波宇宙センターに到着しました。筑波宇宙センターにおきましては、管制室他をガイド付にて見学を行いました。終了後はバスにて、次の見学場所であるアサヒビール茨城工場に移動し、製造工程・原材料等の見学を行いました。見学終了後は、朝の集合場所である東京駅に予定時刻に戻り解散となりました。
 当日は強風により、高速道路の速度制限等がありましたが、無事、事故・遅延もなく全行程を完了し、アンケートの評価も良く、見学会を実施することができました。

2.筑波宇宙センター見学

 (1)施設概要
    JAXA(宇宙航空研究開発機構)の推進する活動のうち、人工衛星の開発・運用、宇宙環境の利用、宇宙飛行士の養成、ロケット・輸送システムの開発等を行う施設として、1972年に筑波緩急学園都市の一画に設立されました。
   主な見学施設としては、展示館「スペースドーム」、HⅡロケット実機等があります。
   展示館「スペースドーム」では、人工衛星(情報通信分野・地球観測分野)、人工衛星の歴史、国際宇宙ステーション実物大モデル、宇宙ステーション補給機「こうのとり」、ロケット・輸送システムの歴史等が展示と共にガイドによる説明が行われています。

(2)ガイド付き見学ツアー
  ① 追跡管制棟

宇宙服 NASA

  入口には宇宙服が展示されています。
 宇宙服は、強烈な太陽光を防ぐためのシールド、多層構造による宇宙服内温度上昇を防ぐための水冷システム、生命維持装置および各種調節用スイッチ類が主な構成となっています。
  次に管制室へ移動。
 そこでは、国際宇宙ステーション(ISS)内「きぼう」日本実験棟の運用管制官が3交代、24時間体制で運用を行っています。
 正面には大画面が3面設置され、「きぼう」外観、通信情報、NASA管制室の様子が表示されています。

  ②宇宙飛行士養成棟
    この建物においては、新規技術ではなく、これまでの歴史、宇宙での生活による影響等に関する研究に関するものが主な展示となっています。

  ・宇宙メダカ飼育実験
    飼育が容易であること、世代交代が早いとの理由で、宇宙環境による影響を調べる実験にメダカを使用しています。宇宙での飼育による骨量減少するプロセスを調べることにより、骨粗鬆症の治療方法の開発等も研究テーマとして挙げられています。

  ・宇宙飛行士訓練・試験、無重力空間での人体影響実験設備
    ロケットによる移動時の加速重力(縦・横)体験装置展示、無重力による血流の変化体験装置が展示されています。無重力状態では、ムーンフェイスと呼ばれる顔が浮腫んだような状態になります。これは、通常時に比べ、無重力状態では上半身に送られる血流量が増えることが原因です。この状況を再現するため、数日間足を頭より高くし、就寝するためのベッドが設置されています。

  ・宇宙食展示
    宇宙ステーションでは濃い味のものが好まれる傾向にあり、塩分の取り過ぎによる影響が問題になっているとの説明がありました。現在では、塩分は50%カットされた宇宙食が開発されているとのことです。宇宙食としては日本製およびアメリカ製のものが展示されています。

展示施設棟 HⅡ ロケット前にて (参加者一同)
3.アサヒビール茨城工場見学

 (1)施設概要
    全国8ヶ所にあるビール工場のうち最大規模を誇るのが、この茨城工場となります。

集合写真 (エントランスホール)

 (2)ガイド付見学ツアー
  ①オリエンテーションシアター
    3面の大画面スクリーンを利用し、茨城工場の歴史、ビール製造に関する概要、環境活動を含めた企業の取り組みの放映が行われます。放映後は、スクリーンが収納され、その背後に池、建物、木々が組み合わされた庭園が現れます。良い環境の下、ビール製造が行われているイメージが湧いてきます。

  ②原料展示
    主原料となる麦芽とホップを実際に手に取り香りと味を楽しむことができます。黒ビールと通常のビールとの違いは麦芽の焙煎度合いの差に依るものです。培燥工程により通常の麦芽、ロースト麦芽、黒麦芽といったビールの色と香りを決める幾種類もの麦芽が生まれます。
     この建物においては、新規技術ではなく、これまでの歴史、宇宙での生活による影響等に関する研究に関するものが主な展示となっています。

シアターから見た庭園
麦芽展示

  ③仕込み・発酵・熟成・ろ過工程
    実際の製造工程を見ることはできず、映像・パネルによる説明となります。発酵・熟成工程におけるタンクは建物外に設置され、低温で熟成されています。このタンクは最大のもので高さ20m、容量500kℓとなり、350mℓの缶ビールで約143万本で毎日1本ずつ飲んで4,000年かかる量を熟成しています。この工場での生産量は大びん換算で370万本/日となります。
    ろ過タンクでは、フィルタ付きの配管を下から上にビールを通過させ、ビール酵母等を除去します。ビール酵母にはたくさんの栄養成分が含まれていることから、健康食品として利用されます。
   また、「うまい!」ビールを届けるため、選抜試験に合格した30名ものパネリストによる官能試験(実際にビールを飲み、味・香り等を検査)が毎日、行われます。

  ④瓶詰・缶詰工程
    できあがったビールは、衛生管理されたフィーラールームにて、酸素を追い出した瓶・缶に詰められます。
   その後、蓋を取付、ラべリング工程を経て、ケース等に詰められます。

缶フィラー
ラベラー

  ⑤環境への取り組み・再資源化展示コーナー
    事業所内でのゴミ分別、再資源化100%目指す取り組みがパネルにて表示されています。
   (アサヒビール全工場で副産物・廃棄物再資源化100%達成)ペットボトルを再生し製作したユニフォームも展示されています。

  ⑥試飲コーナー
    見学ルートである地上30mのスカイロードを経由し、地上60mのアイムタワーへと移動します。
   (アイムタワー:Asahi Ibaraki Moriyaの頭文字から命名)ここでは、出来立てのスーパードライの試飲や美味しい家庭でもできるビールの注ぎ方の実演等があります。ちなみに「アサヒスーパードライ」は、2017年3月17日で発売開始から30年を迎えます。

試飲会場
おわりに

 関東・甲信越地区施設見学会は、研究施設・工場が多数存在するつくばエリアより、2つの施設を選びました。参加者の現在の業務に密接に関わると言った分野ではありませんでしたが、将来や普段の生活を感じられる興味深い内容であったと思います。
 最後に今回の見学会にご協力頂きました宇宙航空研究開発機構、アサヒビールの関係の皆様に感謝とお礼を申し上げます。

以 上

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活動報告(中部・北陸)

「知の拠点あいち」

活動名「知の拠点あいち」
実施日平成29年(2017年)2月13日(月) 14:00~15:50
場所「知の拠点あいち」
  愛知県豊田市八草町秋合1267-1
参加者23名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者中部・北陸地区担当幹事 加藤 順一
1.はじめに

 平成28年度の中部・北陸地区計装士会見学会では、「知の拠点あいち」を見学しました。
 連日平年を下回る気温が続く中、寒さにも関わらず全員が時間前に集合され、10分前倒しの開催となりました。
 今回の見学は、シンクロトロン光装置を見るのが目玉でした。一般的には2階フロアから窓越しに見下ろし説明を受けるだけなのですが、日程を非利用日に当たる月曜日に設定することにより、装置の間近まで行き説明を受けることが出来ました。もちろんこの企画は、施設を 管理されておられる(公財)科学技術交流財団様の多大なるご厚意により実現できました。
 この、知の拠点あいちは名古屋市の郊外の瀬戸市と豊田市の境界線上に位置しているめずらしい立地です。2005年に開催された愛知万博の駐車場を利用した為と云うことでした。
 この施設は、最先端の研究開発環境を備え、付加価値の高いモノづくり技術を支援している研究開発拠点です。

2.見学内容

 (1)「知の拠点あいち」の全体の説明:
   会議室にて、「知の拠点あいち」を構成している「あいち産業科学技術総合センター」と「あいちシンクロトロン光センター」に関して説明を受けました。
   この施設の特徴は、全国の同様な施設に比べ民間の利用が多く大学や公的機関の利用を上回っており60%を占めることです。このことは、企業が新たな製品を創造するのに有益な支援ではと感じました。愛知のモノづくり文化にもつながっていきます。
  「あいち産業科学技術総合センター」は、愛知県の施設で、あいち産業科学技術総合センターが運営しています。ここは、県内にある各技術センターの本部としての位置づけです。
   この施設の機能は、技術支援業務として技術相談・技術指導、共同研究、受託研究等及び、試験・分析測定業務として依頼試験等を行っています。
   「あいちシンクロトロン光センター」は、ナノレベルの先端計測分析施設で、シンクロトロン光というビームを照射することにより、化学状態や構造を測定します。短時間、非破壊、実使用環境下で、極微量の試料でも測定できるそうです。
   同様な施設でよく知られているのは、兵庫県にある「Spring-8」です。「あいちシンクロトロン光センター」は、それより小規模な為あまり知られていません。(公財)科学技術交流財団の施設です。

 (2)シンクロトロン光設備の見学:
   シンクロトロン光とは、光速で直進する電子が電磁石で進行方向を変えられたとき発生する電磁波です。この電磁波は、曲がらず直進する非常に明るい光です。
   まず、一般の見学と同様に2階フロアから窓越しに説明を受けました。その後実験ホール内へ入り装置毎の説明を受けました。
   シンクロトロン光は、コンクリートの壁の中で電子が放射され、加速するリングと蓄積するリングを経て、電磁石により発生します。コンクリートの壁の中は放射線が発生しています。
   発生したシンクロトロン光は、ビームラインと呼ばれるコンクリートから突き出した枝を進み、分析資料へ照射されます。ビームラインは10本近くあり、各ビームラインは用途が違います。
   それぞれの分析に関して、装置の前まで近づき説明をしてもらえました。
   説明していただいたのは、シンクロトロン光産業利用コーディネータである工学博士の方で、非常に恐縮しました。

3.おわりに

 当日の案内や説明ばかりでなく、見学の企画も無理を聞いていただきました(公財)科学技術交流財団の方々に感謝申し上げます。

以 上

科学技術展示コーナー前で見学参加者集合写真
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活動報告(九州・沖縄)

株式会社 安川電機

活動名株式会社 安川電機
実施日平成29年(2017年)2月9日(木) 13:15~18:00
場所株式会社 安川電機
 北九州市八幡西区黒崎城石2-1
参加者16名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者九州・沖縄地区幹事 久保 一昭
1.はじめに

 ㈱安川電機は、1915年に炭坑用電機品の受注製造からスタートし、一昨年には100周年を迎えた。
 安川電機グループは、安川電機を中核として子会社79社及び関連会社19社(平成24年3月現在)により構成されている。創業以来「電動モータとその応用」を事業領域に定め、その製品・技術により時代の先端産業を支えてきた。自らの技術をもって事業にあたる「技術立社」を社是として、事業の基盤である「メカトロニクス」のコンセプトを世界に先駆けて提唱し、世界一・世界初の革新的な技術・製品の開発にこだわりながら、品質第一の経営を貫いてきた。
 コア技術は、「ロボット技術」、「モーション制御」、「パワー変換」で、その技術を用いた産業用ロボット、サーボモータ、インバータは世界シェア1位を誇る。

2.施設の概要

 1)安川電機みらい館
    ものづくりの魅力、そしてロボットの最新技術などを 発信する展示・体感・学習できる見学施設。

 2)ロボット第1工場
    前身である「モートマンセンタ」は、1990年に世界で初めての「ロボットがロボットを作る工場」 として誕生した。創立100周年を期に最先端のロ ボット技術を投入し、自動化率を飛躍的に向上させた 「ロボット第1工場」としてリニューアルした。
    アーク溶接、ハンドリング用途の小形ロボットを 中心に製造し、生産能力は1000台/月に達している。

 3)ロボット第2工場
    2013年8月に新設した最先端のクリーン ロボット工場である。液晶・半導体、バイオメディカル、食品・薬品・化粧品など、様々な業 界に向けたクリーンロボットを生産しており、生産能力は500台/月に達している。
    また、 独自の省エネ技術を生かし、CO2排出量を抑え た環境に優しい工場である。

紹介DVDの閲覧
バイオメディカル用ロボットの展示

IQロボットの展示

4.おわりに

 今回見学した工場は、産業用ロボット、サーボモータ、インバータの3分野において世界シェア1位を誇る㈱安川電機の主力工場である。この工場は創立100周年を期に工場再編を行うと共に最先端の技術を投入し、自動化率を飛躍的に向上させるなど最先端の工場であり、大変興味深く見学した。また、見学施設みらい館も㈱安川電機の技術及び製品が一般の方でも分かりやすく展示しているとともに、遊びながら技術を体感でき、大変見応えのある施設であった。 この度、工場、展示館のご説明を頂きました㈱安川電機の皆様に心からお礼を申し上げます。

以 上

集合写真
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活動報告(四国)

1. JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 (倉敷地区)  2. 三菱自動車株式会社 水島製作所

活動名1. JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 (倉敷地区)
2. 三菱自動車株式会社 水島製作所
実施日平成29年(2017年)2月9日(木) 8:30~18:00
場所1. JFEスチール株式会社 西日本製鉄所 (倉敷地区)
   岡山県倉敷市水島川崎通
2. 三菱自動車株式会社 水島製作所
   岡山県倉敷市水島海岸通
参加者20名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者四国地区担当幹事 佐藤 和宏
1.はじめに

 岡山県倉敷市にあるJFEスチール(株)西日本製鉄所(倉敷地区)および三菱自動車(株)水島工場を訪問しました。JFEスチール(株)西日本製鉄所(倉敷地区)は、鉄鋼の原料受入れから商品出荷まで行っており、福山地区との一体運用より世界一規模の鉄鋼生産を行っています。また、隣接する三菱自動車(株)水島工場は、自動車生産の主力工場の一つで、プレス工場から最終組み立て工場までの車作りの全工程作業を行っており、年間に軽自動車や海外向け普通車など約40万台を生産しています。

2.見学内容

(1)JFEスチール株式会社 西日本製鉄所(倉敷地区)(見学センターのみ撮影可)

  見学センターの大ホールで、西日本製鉄所として福山地区と倉敷地区を合わせた規模感や、倉敷地区について、製鉄所として発展した背景は「地盤がしっかりしていること」、「自然災害が少ないこと」、「水深の深い(17m)港があること(製品の7割強を船で出荷)」の3点があり、東京ドームの240倍、東京の千代田区と同じ広さに社員3300名を含め、9000名が働いているとの説明がありました。
  また、製鉄の各工程として高炉で銑鉄を取り出す「製銑(せいせん)」、銑鉄から硫黄やリンなど不純物および炭素を除去して鋼(はがね)とする「製鋼(せいこう)」、製鋼で造られたスラブ(鋼片)を1㎜以下の薄板から400㎜までの厚板に加工する「圧延(あつえん)」などについてビデオ上映等による説明を受けました。
  その後、バスに乗り黒くそびえ立つ高炉に向かい、一旦稼働をはじめたら18年間は停止することが無いという高炉の底から、銑鉄を貨車に流し込む様子をバスの中から見学しました。
  続いて、厚板を製造する圧延工場に移動し、工場内の見学通路で板厚ミルのローラー上でスラブを移動させながら上下に挟むローラーで圧力をかけ延して厚板製品に仕上げる様子を見学しました。厚みを1mm以下の精度でコントロールして最大幅5m超、長さ25m超までの厚板に全自動で仕上げている制御には、様々な経験やノウハウが盛り込まれていることは間違いないと感心しきりでした。

見学センター入り口
机上説明会 (大ホール)
圧延工程の説明画面
見学者集合写真 (圧延工場入口)

(2)三菱自動車株式会社 水島製作所(PRセンターのみ撮影可)

  PRセンター1Fで見学の諸注意を確認したのち各人がワイヤレスレシーバーや帽子を受取自動車組み立て工場に徒歩で移動し工場見学がスタートしました。スポット溶接等のロボット達が、プレス後の軽自動車のアンダーボディと左右側面のボディやドアを溶接・製作して各部を組み上げ、スポット溶接の火花を散らしながらボディ骨格を完成させていました。
  続いて、塗装が終わり出来上がったボディに、流れ作業でエンジンや足回り、内装、エクステリア等を組み付け完成車とする組立ラインを見学しました。これらの工程は、受注生産に対応しており受注仕様に合わせて異なる仕様の車が同じライン上で生産されています。
  工場内は、有人荷物運搬車のほか無人の荷物運搬車も数多く走り回っているほか、組立ラインでも、タイヤやガラスなどの重い部品を簡単な仕組みで精度良く短時間で組み付ける工程は、ロボットによる自動化が進められています。複雑な部品や作業にノウハウがあるような工程は人が作業を行っていますが、ロボット等による省力化の範囲はさらに広がっていくものと思われます。
  続いてPRセンターに戻り、2階の研修室で、水島製作所の生い立ちからの沿革や現在の概況などについて、ビデオ上映等による説明がありました。
  1946年に小型3輪トラックの生産を開始してから、1970年に三菱重工から三菱自動車に分離・独立し、エンジン組立工場や鋳物工場などもある稀有な一貫生産工場で、近年は、軽の電気自動車もガソリン車と同一のラインで混流生産しているとのことでした。

PRセンター1F 車展示
PRセンター2F 研修室
小型三輪トラック「みずしま号」
見学者集合写真 (PRセンター)
おわりに

 四国地区の見学会は毎年2月頃と寒い時期の開催で、天気予報では、雨の確立が高く、場合によっては雪が降る可能性があるなど心配をしておりましたが、工場見学をしている時間帯は、寒さが厳しくなることもなく、時折、日が射す落ち着いた天気でまあまあの見学日和でした。ご参加いただきました皆様には、本会運営にご協力いただきまして誠に感謝しております。
 今回は、瀬戸大橋を渡り、対岸の岡山県倉敷市の製鉄工場と自動車工場を見学してきました。日本でも有数の工業地帯に位置する代表的な事業者の工場であり、どんな設備を見学できるのか楽しみにしておりました。
 JFEスチールでは、ローラーで挟んで圧延する板厚ミルを見学させていただき、赤いスラブが目の前のローラー上にあると10~20m程度離れているにも関わらず、熱が伝わってくるのがわかり、危険と隣り合わせの現場であることを実感しました。
 また、三菱自動車では、多くの産業用ロボットが導入されている最先端の製造現場を目の当たりにし、益々、いろんなものを測定して数値化し制御する計装技術が重要になってくると感じました。
 参加者の皆様におかれましては、普段は、なじみのない現場などの見学が、直接的・間接的に、皆様のお役に立つ何かを見つけて頂く機会となれば幸いです。また、次回の見学会も楽しみにお待ち頂ければと思います。
 最後に今回の見学会にご多忙な中、ご協力いただいたJFEスチール株式会社 西日本製鉄所(倉敷地区)および三菱自動車株式会社 水島工場の皆さまをはじめ、関係各位に厚く御礼申し上げます。高い技術力と強い基盤をもった企業として益々発展されますことを祈念いたします

以 上

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活動報告(九州・沖縄)

『計装士のための再生可能エネルギーとその利用技術』

活動名『計装士のための再生可能エネルギーとその利用技術』
講師
アズビル㈱ 藤沢テクノセンター
ビルシステムカンパニー マーケティング本部
部長 福田 一成 講師
実施日平成28年(2016年)11月16日(水)14:00~17:00
場所㈱九電工 福岡支店 1F 多目的ホール
参加者27名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者九州・沖縄地区担当幹事 久保 一昭
はじめに

 九州・沖縄地区では平成28年度の活動として、11月16日(水)に上記内容にて勉強会を開催致しました。 以下に概要の報告を致します。

福田講師 講演風景
講演内容

 テーマ 『計装士のための再生可能エネルギーとその利用技術』

 1.再生可能エネルギーとは

   ● 再生可能エネルギーの定義・意義
    ① IPCCの定義
     ⇒太陽・地球物理学的・生物学的な源に由来し、自然界によって利用する以上の速度で補充されるエネルギー全般
    ② 対義語
     ⇒枯渇性エネルギー:化石燃料、ウラン等地下資源
    ③ 日本のエネルギー・資源学会での定義
     ⇒再生可能エネルギー資源とは、枯渇性エネルギー資源に対する用語で、絶えず資源が補充されて枯渇する事のないエネルギーであり、太陽光、風力、水力、バイオマス(生物資源)、地熱、太陽熱、バイオ燃料などを含む。
    *人類が石炭を本格的に使用してきたのは産業革命以後の250年程度であるが、あと160年ほどで枯渇すると言われており、バイオマスエネルギーとして植物を利用するとき、植物の生長期間で育った分だけ利用すれば枯渇しない。
    ④ 化石エネルギーの有限性
     ⇒石油で40年、石炭で160年と言われ、今すぐではないが、100年ぐらいの間になんとかしなければならないというところがポイントになる。
    ⑤ 再生可能エネルギーの意義
     ⇒長所及び社会的価値
     ・「非枯渇資源」・「低炭素」・「Nox、Sox、放射性廃棄物を出さない」
     ・「冗長性、自立性」・「新産業(代替産業)としての経済効果」
     ⇒短所
     ・資源によってエネルギー密度が低い
     ・他の産業、活動などとの競合(紛争)

   ● 我が国の再生可能エネルギー推進の歴史
    ① サンシャイン計画
     ⇒オイルショック以降、(1973年)太陽光発電、風力発電、燃料電池などの発電システムが注目を集め、
      1974年9月石油代替エネルギー・新エネルギーの技術開発を目指す「サンシャイン計画」が発足
     ⇒1980年 日本のサンシャイン計画の実施機関として「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)が設置される。
    ② ニューサンシャイン計画
     ⇒1993年 それまでのサンシャイン計画、ムーンライト計画、「地球環境保全技術」を統合して「ニューサンシャイン計画」が始まる。
    ③ 新エネルギー導入大網
     ⇒1994年12月 石油に代わる安定したエネルギー源の確保、低炭素化などの目的で新エネルギー導入を積極的に図ることを主旨とした「新エネルギー導入大網」を閣議決定。
    ④ 設備補助金から再生可能エネルギー買取へ
     ⇒2000年 グリーン電力証書
     ⇒2003年 RPS法(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別処置法)施行
     ⇒2009年 余剰買取制度(固定価格)
     ⇒2012年 再生可能エネルギー特別措置法(全量固定価格)FIT
    ⑤ FITの課題
     ⇒買取にかかる費用は電力価格に広く上乗せ(賦課金)、電力料金の高騰
     ⇒予測不可能且つ制御不可能な制度設計

   ● 今度の導入と技術開発の見通し
    ① 2030年長期エネルギー需要見通し
     ⇒新エネ 4.3%+水力3.2%→13~14%:新エネ4.3%→9.8~10.8%の2.5倍

 2.各種再生可能エネルギーの特徴と課題
    ① 過去10年間の再生可能エネルギーの伸び率
     ⇒2003年(1,300万KW)→2008年(1,600万KW)年間平均伸び率5%
     ⇒2008年(1,600万KW)→2012年(2,300万KW)年間平均伸び率9%
     ⇒2012年(2,300万KW) →2013年(3,000万KW)前年比32%
    *太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマスの中で、太陽光の普及が殆どである。
    ② 今後期待される再生可能エネルギー
     ・太陽光発電
     ・風力発電(陸上風力、洋上風力)
     ・バイオマスエネルギー(木質系、農業残さ系、家畜排せつ物等)
     ・バイオマス発電(間伐材、熱分解ガス化、メタン発酵等)
     ・熱利用(バイオマス熱、太陽熱)
     ・海洋エネルギー
     ・地熱・地中熱エネルギー
     ・中小水力発電

 3.再生可能エネルギー利用技術
   ● 再生可能エネルギー導入に伴う系統課題
    ① 電力需給ギャップの発生
     ⇒現在の電力系統は需要に対して発電量を制御して安定供給しているが、太陽光や風力は気象条件で出力
      が変動するため、大量に接続すると需給のバランスが保てなくなる。
    ② 周波数変動の発生
     ⇒電力系統において、需要と発電量のバランスが崩れると、周波数が変動し需要家側の機器に影響を及ぼすと共に、周波数が変動すると、発電機の保護機能が働き、発電機が解列し大停電を引き起こす。
    ③ 配電系統の電圧上昇
     ⇒配電系統に連係される再生可能エネルギー電源が増加すると、電力が逆潮流する事によって、連係点の電圧が適正値を逸脱する。

   ● 対策技術
    ① 電力側
     ⇒変動する出力と需要とのギャップを火力発電や水力発電などの従来型電源の出力調整により吸収する。
    ② 再生可能エネルギー側
     ⇒揚水式水力発電
     ⇒風力発電の出力調整機能
     ⇒FACTS(パワーエレクトロニクス技術を用いた電圧上昇対策)
     ⇒蓄エネルギー(電力潮流安定化技術)
     ⇒水素利用(エネルギー変動調整)
    ③ スマートコミュニティの実証
     ⇒単一部門(家庭)のみの制御(住宅団地型、戸別住宅型)
     ⇒複数部門の総合制御(広域大都市型、地方中核都市型)

 4.欧州最新事例
   ● リヨンスマートコミュニティ実証事業
     ⇒再生可能エネルギーの有効利用を都市レベルで実現する我が国のスマートコミュニティ技術を海外で実証する事業として、フランス・リヨン都市圏のNEDOプロジェクトが実施された。
    ① TASK1 新設ビルのPEB化
    ② TASK2 スマート交通システム
    ③ 太陽光発電を優先利用する最適充電
    ④ TASK3 既設住宅のスマート化
    ⑤ TASK4 地域エネルギー可視化CEMS

   ● 再生可能エネルギー先進国 ドイツの最新事例
    ① EWE NETZの概要
     ⇒EWEグループはドイツ北西部の大きなエネルギー会社の一つ(ドイツで4番目)で、顧客数は、電力130万戸、ガス170万戸、通信70万戸である。
      洋上風力発電事業にも参画している。
    ② 2013年のドイツの電源構成のうち、25%を再生可能エネルギーが占めており、2050年までに80%まで伸ばしたいと考えている。
    ③ 一方、EWE NETZに供給されている電源構成の再生可能エネルギーの比率は、2013年12月の段階で90%までに伸びており、ドイツ全体の目標をすでに上回っている。
    ④ 2008年からは、再生可能エネルギーの中でも、太陽光発電の設置数が、約40,000台増えている。
    ⑤ Audi E-gas Plant
     ⇒e-gasプロジェクトは「Power to Gas」の世界初の工場規模プラント
     ⇒風力発電の電力を電気分解し、水素を製造する。この水素をCo2と合成しメタンを製造するという、再生可能電力を燃料大胆なプロジェクトである。
     ⇒製造したメタンは既設のインフラに供給し、圧縮されたCNG自動車の燃料として使用される。ドイツ国内では、約700のCNGスタンドがあり、燃料供給には困らない。

所 感

 今回の勉強会では、再生可能エネルギーについて、昨今の社会情勢を踏まえ、枯渇性エネルギーに代わり得る、非枯渇資源の有効利用として、最新の知識や情報と具体的な方法で分かりやすく説明していただき、今回の参加者の方々も再生可能エネルギーの動向についてはビジネスに直結する内容であったため、とても興味深く耳を傾けていました。
  ご多忙中にもかかわらず、講師をお引き受けいただきました福田講師に厚くお礼申し上げるとともに、今後とも益々のご活躍をお祈り申し上げます。

以 上

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活動報告(東北・北海道)

最新型のガスタービンを採用したコンバインドサイクル発電で 熱効率世界最高水準の火力発電施設の見学 中央制御室、タービンフロア、LNGタンク、防災・地震・津波対策

活動名最新型のガスタービンを採用したコンバインドサイクル発電で
熱効率世界最高水準の火力発電施設の見学
中央制御室、タービンフロア、LNGタンク、防災・地震・津波対策
実施日平成28年(2016年)10月25日(火) 14:30~16:00
場所東北電力株式会社 新仙台火力発電所
宮城県仙台市宮城野区港5-2-1
敷地面積:約325,000㎡
発電出力:98万kW (49万kWx2軸)
参加者28名(内計装士会9名)
主催(一社)電気設備学会東北支部
協賛計装士会
(一社)日本電設工業協会東北支部
報告者東北・北海道地区担当幹事 川崎 久
1.はじめに

 今回の見学会は東北電力㈱殿のご厚意により一般社団法人電気設備学会東北支部主催、一般社団法人日本電設工業協会東北支部及び計装士会の共催で実施しました。
 同社は、民間電力会社です。供給区域は東北6県および新潟県で、1951年(昭和26)電気事業再編成の一環として旧東北配電の供給区域を継承して設立され、現在、新仙台火力発電所は、宮城県内を中心に東北電力管内に電力を供給する中心的な施設です。
 同社のご厚意により、設備を見学することが出来ましたので、下記に報告します。

2.見学内容

 新仙台火力発電所の経緯と概要、そして震災を踏まえた地震・津波対策などをご説明いただき、中央制御室及び平成27年より運用を開始した3号系列の最新式コンバインド発電施設、LNGの受け入れ施設、貯蔵施設を見学させて頂きましたので、見学の内容をご報告いたします。

  新仙台火力発電所について

 同社のS+3E(安全/Safety+安定供給/Energy security、環境保全/Environmental conservation、経済性/Economy)
 の観点に基づき、LNG(液化天然ガス)を燃料としたクリーンで高効率な火力発電所です。
 従来の1,2号機を廃止し、最新の高効率コンバインドサイクル発電設備を採用した3号系列は世界最高水準の熱効率を誇り、地球温暖化や資源の有効利用、低コスト、低炭素社会に寄与する施設です。

  主要設備について

 発電設備の概要は、出力49万kWを発生させる一軸形のコンバインドサイクル発電設備が2基導入されています。
 1500℃級のガスタービン、蒸気タービンと発電機を一軸に配置した構成でガスタービンより排出された645℃の廃熱を廃熱回収ボイラーにより回収し蒸気タービンを駆動させ発電を行うことで、LHV基準で熱効率60%の世界最高水準の効率を誇ります。
(※LHV:低位発熱量(燃料の燃焼によって生成された水蒸気の蒸発潜熱を除いたもの)
 また、CO2排出係数は0.327kg-CO2/kWhであり低炭素社会に貢献をしています。 

3号系列タービンフロア
LNGタンクとLNG桟橋

 LNG燃料施設はタンカーで海上輸送されたLNGを受入、貯蔵、気化する設備で構成され、貯蔵するLNGタンクは地上式PC外槽式円筒竪型貯槽(16万m3)を2基備えています。
 このLNGタンクは-162℃で貯蔵されるLNGの極低温に対応するために、9%ニッケル鋼の内槽と鋼製外槽と断熱層で構成される2重構造で魔法瓶状の形状となっています。
 また、一体化したコンクリート厚1.1m~0.6mの外殻で漏洩を防ぐ一体構造のため、防液提が無い事も特徴
で、敷地を有効に活用できるメリットがあります。
 また、東日本大震災級の地震や津波にも十分耐える設計がなされています。

 気化器はオープンラック式3基が設置されます。
 燃料のLNGはオーストラリア、マレーシア、インドネシア、カタール、サハリンなどの複数の生産者から調達し、安定的な供給を受ける体制を整えていました。また、LNGタンカーで海上輸送されたLNGは桟橋で荷揚げされ、年間100万トンのLNGをスムーズに受入るために、幅広い船型に対応した設備としているとの事でした。
 LNGは硫黄酸化物・ばいじんを排出しないクリーンなエネルギーです。新仙台火力の煙突には希少野生動物種のハヤブサが休憩所を作り生息しているとの紹介もありました。

  運用と安全対策

 同施設の中枢となる中央制御室を見学。
 効率的に配置されたモニターと操作環境が整備され運用されていました。
 4名+αによる交代勤務でほぼフル運転状態で運用されている状況で、他の太陽光発電等の発電状況に合わせ出力を調整しながら運用がなされています。
 施設全体は東日本大震災において津波被害を受けた経験を踏まえ、新たな3号系列は地震津波の対策として、耐震性強化・重要施設の上階化・かさ上げ処置・防潮堤や盛土、植栽による減災対策など多く採用しています。
 LNGの火災対策も含めたトータルでの防災・地震・津波・減災対策を考慮した設備となっていました。

中央制御室
3.おわりに

 今回の見学会で、東北電力株式会社 新仙台火力発電所の皆様にはお忙しい中、説明及び見学のご案内をして頂き、こころより御礼申し上げます。                                以  上

 見学参加者集合写真(玄関入り口前にて)
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活動報告(近畿)

「計測・校正における不確かさの使い方」

活動名「計測・校正における不確かさの使い方」
講 師
三興コントロール㈱
校正技術部 部長 田村 純 講師
実施日平成28年(2016年)10月20日(木)14:00~17:00
場所TKPガーデンシティー 大阪梅田
 大阪市福島区福島5-4-21 TKPゲートタワービル
参加者17名
主催計装士会
協賛(一社)日本計装工業会
報告者近畿地区担当幹事  三好 真二

平成28年度近畿地区活動として上記勉強会を実施しました。豊富な資料をもとに3時間にわたりご説明いただきました。内容の概要(項目)は以下のとおりです。 

講義内容

 1.計測と精度
    ・まちがえやすい言葉
   「繰り返し性」と「再現性」
    ・2つの精度
    計測時の精度 : 再現性
     管理制度 : 繰返し性
    ・もう一つの2つの精度
    カタログ精度
    管理精度
    ・精度はセンサ・計測機器の性能の「一つ」
    ・カタログ表記、計測時、管理精度の意味
    ・使用者が精度をどのように捉えているかが重要!

 2.計測と校正
    計測
    ・長期安定性に優れているか
    ・計測範囲の直線性が良いか
    ・環境適合性(≒再現性)に優れているか
     ・必要な管理精度(許容値)をきめているか
   校正
    ・規格・基準に「寄り掛かる」思考からの脱却
    ・試験・検査と校正の違いを認識する
    ・自社の標準(値)を持つことが必要
    ・開示必要な文書は汎用性の高い用語を使用
    ・要員の教育訓練と技能評価システムを確立する

 3.初めての不確かさ
    ・「不確かさ」評価は世界的約束ごと、決め事
    ・計測値、校正(試験)値の信頼性は「不確かさ」
    ・表舞台(規格・基準)から「誤差」が消えた
    ・トレーサビリティの確保にも注意が必要
    ・今まではセンサ、計測機器や分析計の性能の「良さ」を精度と言う用語で表記して いた。
    ・それはバラツキが存在しない観念的、絶対的な基準器との比較で確かめていた、
     その計測(校正)結果の良さを「誤差」で表していた。
    ・カタヨリ(偏差)も、バラツキ(不確かさ)も持つ標準器(物質)と比較し、結果のカタヨリ(偏差≒誤差)はありのままの姿として捉え、校正結果の信頼性をその存在範囲(バラツキ)で表す約束をした。
    ・その存在範囲を「不確かさ」と呼ぶことにした。

 4.校正結果の見方
   校正は「不確かさ(数値)」を求めることが主な目的ではない。
   校正結果(値)を求める為に最大の努力をすると、必然的に「不確かさ(数値)」が付いてくる。

 5.校正にまつわる項目
   適合性評価
   有効期限
   トレーサビリティ

受講アンケート結果

 1.勉強会の内容について・・・「満足、ほぼ満足」:92.9%
 2.業務に役立つか ・・・「役立つ・少し役立つ」:100%
 3.興味のあった話題・項目
     ・初めての不確かさ ・・・ 57.1%
     ・校正結果の見方 ・・・ 42.8%
 4.時間   ・・・「普通」:78.5%
 5.勉強会について ・・・「また出席したい」:85.7%

田村講師
聴講風景
聴講風景
所 感

 今回の勉強会は、計装にとって最も重要な項目・内容と言えます。アンケート結果に見るように非常に満足度は高かったようです。また、「役立つ・少し役立つ」が100%とこれまでにない数字となりました。
 田村講師から、「今日は、“不確かさ”がどんなものか感じてくれれば結構です」という話から はじまりましたが、むしろ、測定、計測・計量、校正等、もう一度、学びなおす必要があるのでは、と感じました。
 最後になりましたが、熱心にご説明頂いた田村講師に対し深謝するとともに、益々のご活躍をお祈り申し上げます。

以 上