今なぜ「計装士」なのか?
一般社団法人 日本計装工業会
政策委員会 副委員長 後藤 教宏
「計装」とは、「プラント・工場・ビル等の設備において、運転・管理の省力化と効率化をはかり、品質・安全の確保及び省エネルギー・省資源化を実現させるために、適切な計測制御機器及び監視装置を計画・装備すること」です。
この場合、プラントが電気やガス、石油化学などの原料になるものをつくりだす施設の場合は、経済産業省の管轄になり、工場・ビルの場合は国土交通省の管轄になっています。
いずれにしても、大きなものを作る場合は、請負工事が必要になります。請負工事とは、ある契約した範囲を完成し引き渡すことですが、この請負の関係を定義したものが建設業法です。
建設工事の適正な施工を行うためには、実際に施工を行っている工事現場に、一定の資格・経験を有する技術者を置き、施工の状況を管理・監督することが必要になりますが、建設業法においても建設工事施工においては技術上の管理を行う主任技術者を工事現場に配置しなければならないこととされています(建設業法第26条第1項)。
許可を受けた業種(建設業の28業種)については請負金額の多寡を問わず技術者配置の義務がありますので、元々は許可を要しない小規模の工事(500万円以下)であっても、それぞれきちんと配置しなければならないことになります。
主任技術者になるには、一般建設業の専任技術者になることができる資格及び経験を有する必要があります。この主任技術者になれる要件が、電気工事業の場合は電気工事施工管理技士・電気工事士・計装士などの公的資格であり、管工事では管工事施工管理技士・計装士です。
計装士は国家資格に準ずる資格(建設業法施行規則第7条の3(平成18年4月施行))で国の制度に組み込まれています。組み込まれているというのは、国または国に準ずる機関が試験を実施し、資格者を国が認定する資格であるということです。
建設業法には「どんな現場にも主任技術者を配置しなければならない」と決められていますが、そのコンプライアンス(法令遵守)が最近特に大きくクローズアップされてきて、最近では安全上、現場に入るための技術職員名簿の提出が厳しくなってきていると同時に健康保険証と資格者証の提示が義務付けられている現場も多くなってきています。
また、計装士の皆さんには直接関係ありませんが、会社の経営規模を評価するための経営事項審査制度の項目の一つに技術職員の数があり、「計装士」はこの評価対象資格になっています。
ちなみに、建設業法の計装工事に関係する技術者の資格の中で、電気工事業で技術士(3種)・電気工事施工管理技士・建築設備士・電気工事士・電気主任技術者・計装士、管工事では技術士(6種)・管工事施工管理技士・建築設備士・給水装置工事主任技術者・計装士・技能検定(空調・給排水・配管)以外は資格として認められません。
資格を持っていない場合は10年以上の実務経験を証明する必要があります。
昨年、一昨年は計装士の受験者数が増えましたが、まだ計装士の認知度は低いように思えます。皆さんの周りで、数少ない電気工事・管工事に関係する試験のひとつである計装士の資格をご存知ない方がいましたら、是非1級の計装士試験を取得するようにお口添えください。